<阪神11-10広島>◇7日◇甲子園

 新装甲子園で初の「奇跡」は、やはりアニキが起こした。阪神金本知憲外野手(41)が、広島戦の9回2死一、二塁で右翼線に劇的な逆転サヨナラ二塁打を放った。一時は広島に6点差までリードされながらあきらめない。ジワリ、ジワリと反撃し、ついに9回、金本が自身9本目のサヨナラ打で感激のフィナーレを飾った。チームも19安打と大爆発で、連敗を2で止めた。

 奇跡だ。甲子園は、この奇跡のドラマを見せるために生まれ変わった。リニューアル工事を終え、より壮大な姿になったマンモス球場のプロ野球こけら落とし。野球の聖地に恥じないゲームは、金本の劇的な一打がエンディングだった。

 最大6点差をじわじわ追い上げ、1点差まで詰めよった9回裏。2死一、二塁で金本に回った。守護神永川との対決はフルカウントからの6球目。決め球の内角フォークを振り抜き、金本が勝利した。

 右翼線を打球が転がり、赤星に続いて一塁走者鳥谷が本塁に滑り込んだ。11点目、甲子園初戦を飾る逆転サヨナラのホームだ。お立ち台一番乗りも、文句なしに金本だった。

 「まだ興奮しています。アウトなら試合が終わって、長打ならサヨナラ。天国と地獄ですから。天国に行けてよかった。開幕してからチャンスでばかり回ってくる。『マジかよ』って感じ。きょうはおいしい場面。最高の集中力が出た」。

 今季2勝目で2度ともV打は4番金本。開幕から4戦ともタイムリーを放ち、1試合2安打以上を重ねる。劇的なサヨナラ打はこの試合、3安打目だった。

 「甲子園がきれいになった。初めての試合で絶対に負けられないと思った。一塁走者が鳥谷ですから、絶対に(本塁に)かえってくると思っていた」。

 一挙に7点を失い、怒りのジェット風船が宙を舞った7回。左翼を守っていた金本は「あきらめ」を振り払うかのように厳しい顔つきでプレーを続けた。8回1死二、三塁の好機に中前への2点適時打でサヨナラへの扉をこじ開ける。

 始まったばかりのシーズンに、いきなりの6点差逆転、9回裏3点差大逆転の激勝だ。

 金本を中心にした歓喜の輪を見つめ、真弓監督は目を充血させた。「怖いですね。野球は何があるか、分からない。お客さんも満足したんじゃないか。めったにないゲームで興奮したでしょう」。1年に1度あるか、の大逆転劇。3連敗という危機をチーム全員の力で乗り越えた。

 [2009年4月8日9時40分

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