<阪神2-4中日>◇10日◇甲子園

 やっぱり最後は岩瀬しかいない!

 中日の守護神岩瀬仁紀投手(34)が、前人未到の11年連続50試合登板を、リーグトップの37セーブで飾った。2点リードの9回に登場し、1死から代打関本に二塁打を許したが後続を抑えた。チームは阪神から13勝目を挙げ、横浜、広島に続く3カード目のシーズン勝ち越しを決めた。首位巨人とは7・5ゲーム差のままだが、クライマックスシリーズ(CS)を戦う態勢が整ってきた。

 ベンチを出た落合博満監督(55)は、つぶやくように渡田球審に投手交代を告げた。2点リードの9回。岩瀬しかいない。リリーフカーで登場した守護神は、ポーカーフェースを崩さない。打たれたら終わり。誰も助けてくれない。信念を胸に、マウンドに向かった。これが今季50試合目。11年連続となる、前人未到のメモリアル登板だった。

 岩瀬は阪神打線を見下ろしていた。先頭の代打浅井は内角低めに食い込むスライダーで空振り三振に仕留めた。続く代打関本に左翼線二塁打を打たれたが、鳥谷をスライダーで投ゴロ。最後の打者金本はシュートで二ゴロ。絶妙の投球で無失点に抑えた。23日ぶりとなる37セーブ目を手にした。「30セーブと50試合登板は、自分の中でクリアしなければならない数字だから」。数字にこだわらない男が、珍しく自らに課したノルマについて語った。

 追い込まれていた。8月22日の横浜戦(ナゴヤドーム)で同点の延長11回に1失点してから、3戦連続で救援に失敗していた。28日ヤクルト戦(神宮)では05年に本格的に抑えに固定されてから初めて勝ち越される前に降板。雪辱を期した翌29日も延長の末、勝利投手となったものの、打ち込まれた。以来チームの低迷もあって登板機会はなく、この日が今季最長の間隔となる12試合ぶりのマウンドだった。

 戦っていた。疲労と戦い、屈辱と戦った。11年間しびれるような試合で投げ続けてきた疲れは、実戦から遠ざかればわずかだが回復する。だが、打たれた屈辱は雪辱しない限り絶対に晴れない。「苦しい?

 それは言えないし、言わない。言ってもしようがないから」。弱気になりそうな心にムチ打ち、プライドだけは失わなかった。

 これでチームは阪神戦13勝目。CSで対戦する可能性のある相手に、3年ぶりにシーズン勝ち越しを決めた。首位巨人との差は7・5と縮まらないが、それでも戦力は整ってきた。「これからも勝ちにつながる投球をしたい」。奇跡の逆転優勝、そして2年ぶりの日本一のため、守護神は身をけずりながら最後のとりでを守る。【村野

 森】

 [2009年9月11日10時5分

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