<楽天5-4ソフトバンク>◇1日◇Kスタ宮城

 楽天は逆転勝ちで、5月30日以来となる2位に浮上した。2点を追う7回、草野大輔内野手(32)の中前適時打、トッド・リンデン外野手(29)の2点二塁打などで3得点を挙げ、逆転に成功した。これでクライマックスシリーズ(CS)進出マジックを2とし、2日の先発はエース田中将大投手(20)。マー君でCS進出へ王手をかける。

 不思議の勝ちも、これだけ続けば実力だ。試合後、会見場に姿を見せた野村監督は「ナイスゲーム!」と声を張り上げた。2点差の7回に2死から草野の中前適時打で1点差とし、リンデンの左越え二塁打で2者が生還。お得意の集中攻撃で3点を挙げ逆転した。「よく勝ったね。不思議の勝ちだよ。負けゲームだったもんな。(年俸総額)30億円軍団を倒したんだから、大したもんだよ」と、劣勢をはね返す底力に野村節が全開になった。

 5月30日以来の2位浮上だ。攻守の要が、逆転勝利の元をつくった。同点に追いつかれた直後の3回、鉄平は一時は勝ち越しの10号ソロを放った。逆転を許した5回1死二、三塁では、中飛からダイレクトの好返球で松田を本塁で刺した。「準備はしていました。アウトになればいい」とほおを緩めた。いずれもソフトバンクに流れが傾きかけるポイントで、大きな仕事をした。野村監督も「今日は鉄平デー。攻守にわたって大活躍だ」と絶賛した。

 「勝負弱い楽天」はもう過去の話だ。この日で1点差勝ちは21度目。得失点差は両リーグAクラスは得点が上だが、楽天だけは15点も失点が多い。惨敗もあるが、小差の試合では余計な失点をしない守備も、接戦をものにする力になっている。鉄平の好返球以外にも、三塁の草野が強烈なゴロを好捕した。野村監督は「守って攻めるという野球ができているってことだろう。流れがいい方、いい方に傾いている。勝利の女神かエルニーニョか知らんけど。神懸かり的な流れがきている。この流れを大事にしないとな」。勝利の流れを手放さない堅守が躍進を支えている。

 快進撃に新たな目標も生まれてきた。「ビールかけって南海が初めてらしいぞ。誰かが鶴岡監督にかけたのが始まりだってさ」。59年に日本一を決めた南海が、祝勝会を行った旅館の一室で突然始めたといわれている。その席には主力だった野村捕手がいた。球界初のビールかけから半世紀。球団はCSを勝ち抜き日本シリーズに進出した場合、盛大な会を企画している。酒の飲めない野村監督だが、こんな酒なら大歓迎だ。

 ソフトバンクに連勝し、2位確定での地元CS開催まであと6勝。球団初のCS進出マジックも2に減らした。野村監督は「なんとか仙台でプレーオフできるように。そうなるには明日が問題。明日勝てば、非常に可能性が出てくる」と言葉に力を込めた。

 2日は西武の試合がないため、楽天の最短でのCS進出決定は3日の西武戦となる。2日の試合はCS王手を目指し、ソフトバンク戦通算8勝1敗と「ホークスキラー」の田中が先発。歓喜の瞬間は、もうすぐそこに迫っている。【小松正明】

 [2009年10月2日9時3分

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