中日山本昌投手(44)が早くも「キャンプイン」だ。21日、ナゴヤ球場屋内練習場ブルペンで60球の投球練習を行った。昨年の初ブルペンは2月5日で、今年は2週間以上も早い超異例のペース。通算205勝を誇るベテラン左腕は「第1クールのつもりで投げた」と既に自身の中でキャンプが始まっていることを宣言。今季に進退を懸ける熱い気持ちがほとばしった。

 異様な光景だった。若手投手の独壇場である1月中旬のブルペンに44歳が仁王立ちしていた。「後ろで見ているだけじゃ勉強にならないから受けてみろよ」。あっけにとられていた育成ルーキー赤田を捕手に指名すると、独特のフォームから回転数の多い球を次々と投げ込んだ。

 こわばった表情のまま必死に捕球する赤田を尻目に、途中からは変化球も交えた。一緒に投げていたのは27歳鈴木、26歳清水昭。ともに1軍での活躍が期待される投手だが、そんな若さもかすんでしまうほどのオーラを発散しながら60球を投げた。この日、初ブルペンの新人小川が「練習していたので見られませんでした…」とあぜんとするほどの“早業”だった。

 「そんなに騒ぐほどのことじゃないよ。開幕が1週間早い?

 本当にそれだけの違いだから。今日は(キャンプ本番の)第1クールのつもりで投げました」。

 投球練習後、山本昌は既に「体内時計」がキャンプインしていることを宣言した。騒然とする周囲とは対照的にブルペン入りは当然と言わんばかり。開幕が例年より1週間早い(3月26日)ことを理由にあげたが、実際はそれを考慮に入れても異例のハイペースだ。昨年の初ブルペンは沖縄キャンプ第1クール終盤の2月5日だった。例年より2週間以上も早いブルペン入りは今季に懸ける思いにほかならない。

 「最後のつもりでやる」-。昨季1勝に終わったベテラン左腕は今季に進退を懸けて臨むことを宣言している。さらに山本昌を取り巻く環境も厳しさを増している。森ヘッドコーチは1月16日、あえて「2人を先発で競わせる」と山本昌と2年目伊藤の名前をあげて競争意識をあおった。通算205勝の名投手がプロ未勝利の19歳と並べられた。プライドに火をつけられた山本昌は、キャンプ初日のフリー打撃に登板する意欲を見せるなど、1歩も引かない構えを見せていた。

 仕上げには新人選手らととともに、ダッシュを行った。見守っていた中田スカウト部長は「マサのああいう姿勢が長くやれている秘訣(ひけつ)だと思う」とうなった。気温10度に満たないナゴヤ球場に山本昌の熱気が充満していた。【鈴木忠平】

 [2010年1月22日11時3分

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