<広島2-1ヤクルト>◇17日◇マツダスタジアム

 涙、涙の劇勝じゃ!

 広島が粘りの野球でサヨナラ勝利を収めた。延長10回2死一、二塁で代打の天谷宗一郎外野手(26)が遊撃にサヨナラ内野安打。8回まで無失点と好投する先発篠田純平投手(25)が9回、飯原に同点弾を浴びて涙を流すショックを振り払う殊勲打。野村謙二郎監督(43)も「勢いを大切にしたい」と声をはずませた。連敗も「4」でストップ。一丸の勝利で巻き返しに転じたい。

 打球が三遊間を転がる。無我夢中だ。俊足の天谷が必死で走り、最後は無心で頭から飛んだ。ヤクルトの遊撃鬼崎が一塁に送球したが、間一髪で深谷塁審の両手が広がる。その間に二塁走者の梵がホームイン。内野安打だ。サヨナラだ。ナインから手荒い祝福を受け、背番号49の胸に熱いものがこみ上げた。

 土壇場の延長10回2死二塁。目の前で4番栗原が敬遠された。代打を告げられた天谷の心は熱く、頭は冷静だった。「心の準備はできていた。シノ(篠田)が泣いていた…。シノあっての今日の勝利です」。9回裏の攻撃中。同点弾を浴びて一塁ベンチで涙を流す先発篠田の姿は、勝負の世界で生きる者として見過ごせなかった。

 ヤクルト林昌勇の速球にファウルで食らいつく。8球目をミートすると三遊間へ。勢いで走り、白星をつかんだ。「三遊間と一、二塁間が空いているのが見えた。転がせば何とかなるかな」と話した。

 開幕3番に座ったが不振でレギュラーをはく奪された今季。試合前まで打率は2割3厘。それでも腐らなかった。ベンチではフォア・ザ・チームの精神を貫いた。スタメン出場しない試合。投手に第1打席が巡る前、ネクスト・バッターズ・サークルに立つのが習慣だ。「僕が行くしかないですから」。気づいたことを投手にアドバイス。この日も2回、篠田に耳打ちした。率先して、チームが勝つために動いた。

 歓喜の輪が解けたあと、野村監督からぬれた頭をなでられた。「気持ちなんだぞ!」。指揮官の言葉に、また目を潤ませた。不調で悩んだ7月上旬。打撃フォームの改造に取り組み、親身に助言してくれた指揮官や内田打撃統括コーチの思いに応えられたのが、何よりの喜びだった。サヨナラ打は08年以来、3度目だが興奮を隠し切れない。「成績を残していないし、技術うんぬんを語れる選手じゃない。気持ちだけは何とかやっていきたい」。全身でガッツを出し切り、白星を呼んだ。チームの連敗も「4」でストップ。天谷の吹き込んだ“風”がよどんだムードを一掃した。【酒井俊作】

 [2010年8月18日10時16分

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