<阪神1-0中日>◇7日◇スカイマーク

 阪神ジェイソン・スタンリッジ投手(31)が、記憶にも記録にも残る投手になった。中日戦に先発し7回4安打0封。守護神藤川につないで1-0の無失点リレーを導き、今季10勝目をマークした。阪神の助っ人右腕で2ケタ勝利はキーオ以来。猛虎ローテーションの欠かせない1ピースとして、優勝まで突き進む。

 横殴りの雨を味方につけた。大激戦が終わり、まだ熱気冷めやらぬベンチ裏の通路。スタンリッジは湿気を感じさせない、さっぱりした笑みを浮かべた。

 スタンリッジ

 雨は思ったより悪くなかった。暑くなく涼しかったから。台風が僕を助けてくれたね。

 わずか0・5ゲームのリードで迎えた首位攻防3連戦初戦。これ以上ない重圧がかかる1戦を楽しんだ。スライダー、ナックルカーブを中心に次々と空振りを奪い、初回から順調にアウトを重ねた。3回裏途中からは台風9号の影響で強い雨。軸をブレさせる強風、ぬかるむマウンドと悪条件が並ぶ。さらに9番打者として3回無死一塁からスリーバント失敗、4回1死満塁の先制チャンスでは投ゴロ併殺。いつ心が折れてもおかしくない状況だった。それでも平然と前を向くのが身上だ。

 スタンリッジ

 ちょっとガッカリしたけど切り替えるのは難しくなかったよ。

 重圧は嫌いじゃない。デビルレイズ(現レイズ)時代の01年、メジャー初登板を果たした。打席には強力ヤンキース打線がズラリ。相手マウンドには“ロケット”ことクレメンスがいた。150キロ超の剛速球を武器にメジャー通算354勝、7度のサイ・ヤング賞を誇る男と投げ合った。圧倒的不利な戦いにも動じなかった。「プレッシャーのかかる試合だった」。結果は6回1/3を無失点。3-0とリードした状況で降板した。「その後(元阪神)ジャンが4点取られて初勝利はお預けとなったけどね。初登板のボールはもちろん持っているよ」。9年前の経験が、何事にも動じない心の原点だ。

 7回4安打無失点。四球1と抜群の安定感を誇りながら、95球と余力を残しての降板にも納得顔だ。開幕後の途中入団ながら虎助っ人右腕ではキーオ以来の10勝目。何より、また1歩優勝に近づいたことがうれしい。

 スタンリッジ

 日本一のクローザーが控えているからね。もっと投げようと思えば投げられたけど、賢く代えてくれたチームに感謝しているよ。(3連戦)最初の試合で気合が入っていたし、良かった。できれば3連勝したいね。

 生暖かい風が吹く、湿気ムンムンの夜。カラッと晴れやかな笑みが最後まで絶えなかった。【佐井陽介】

 [2010年9月8日14時46分

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