逆転日本一へ、決意のブルペン入り!

 阪神藤川球児投手(30)がチーム全体練習再開日の10日、甲子園でいきなりブルペン入りした。2日間の休養日を終えた直後としては異例の行動。16日から始まる巨人とのクライマックスシリーズ・ファーストステージ(甲子園)に向け、気合の再スタートとなった。2年前の08年CS第1ステージ中日戦ではウッズに決勝弾を浴び、終戦を迎えた。今度こそ快投を披露し、まずはファーストステージを突破する。

 曇り空の甲子園、球児はタオルを片手にブルペンへ消えた。数分後、立ち入り禁止の空間からバンッ、バンッと音が響き始める。キャッチャーミットが悲鳴を上げる音だった。

 2日間の休養日を終え、チームは全体練習を再開した。16日から始まるCSファーストステージ巨人戦に向け、各選手が準備をスタートさせた日。球児はいきなり志願でブルペン入りした。投手陣の多くは練習再開日ということもあり、まだ本格的な調整を控えていた。そんな状況だからこそ、絶対的守護神の行動は異例に映った。みなぎる決意を感じさせた。

 投球を終えて外野芝生に1度戻り、アンダーシャツ姿でロッカールームに引き揚げた。「何もないよ。ほんまに何もないよ」。今日投げると決めていたのか?

 そう問われると「いいや」とはぐらかし、少しだけ表情を緩めた。多くは語らなかったが、約30球を投げたもよう。この日ブルペン入りした投手は18球で感触を確かめたスタンリッジと球児だけ。山口投手コーチは「考えることがあったんやろな」と胸中を思った。

 不本意なシーズンだったに違いない。“火の玉ストレート”にこだわろうと決めた今季。チームは超強力打線に導かれ、大勝を繰り返した。守護神の出番は限られ、不定期な登板間隔に悩まされた。かと思えば、イニングまたぎも当たり前。痛恨の被弾も目立った。3勝4敗28セーブ。防御率は05年にリリーフ定着後、初めて2点台(2・01)に突入し、自己ワーストの年間7被弾を許した。

 9月30日横浜戦(甲子園)では悲劇も待っていた。矢野の引退セレモニーを試合後に控えた2点リードの9回。4番村田に逆転3ランを浴びた。優勝が大きく遠ざかったその夜「責任をとって最後まで仕事をやり抜きたい」と口にした。逆転日本一へ、まだ“仕事”は終わらせない。

 2年ぶりのCS。08年の第1ステージ中日戦3戦目(京セラドーム大阪)では0-0の9回表、4番ウッズに決勝2ランを浴びた。辛すぎる夜から2年、ようやく手にした雪辱の舞台。今度こそ勝ちたい。超短期決戦、必ず出番は来る。だから、球児は妥協なき準備を進める。

 [2010年10月11日11時43分

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