Gキラー能見の分身が現れた!

 阪神小嶋達也投手(25)が14日、甲子園でのシート打撃で打者5人をシャットアウトし、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ巨人戦(16日開幕・甲子園)の戦力に名乗り出た。この日、みやざきフェニックス・リーグから合流。能見のように左ひじを下げるフォームに“変身”した小嶋はマートン、金本ら主力を完ぺきに抑え、首脳陣をうならせた。課題だった左の中継ぎ左腕としてスタンバイ。小笠原、阿部らGの左打者を封じる秘密兵器になる。

 生まれ変わった小嶋がいた。6回1死一、二塁。1度はベンチに退いた左腕が、再びマウンドに送り込まれた。事実上の“最終テスト”。山口投手コーチは「左ピッチャーは、左バッターを抑えないといけない」と打席に左打者の林威助、坂を立たせた。

 腕を下げるフォームに“変身”した小嶋は、自信に満ちたボールを投げ込んだ。その姿は、社会人大阪ガスの先輩能見をほうふつとさせる。Gキラーの分身と化した背番号29は、大きなスライダーで林を遊ゴロ。坂もスライダーで、泳がせ遊ゴロ。仮想阿部、小笠原の2人を難なく料理した。

 1度目のマウンドではマートンは内角をついて見逃し三振。新井、金本も内野ゴロに仕留め、強烈にアピールしていた。2度目はピンチの状況で投入される“中継ぎテスト”。「何とか抑えられて良かったです」。小嶋は充実感に満ちていた。バックネット前に陣取った首脳陣もうなずく。山口投手コーチは「もう、宮崎には行かないからな」と、フェニックス・リーグに送り返すことなくCSのベンチ入りを示唆した。

 実は以前、久保投手コーチに「能見が上から、下から投げているけど、やってみたらどうか」と助言されていた。9月に入り、中西2軍投手コーチと相談。試験的に、ヒジを下げると自分の感覚にマッチした。すると直球は140キロ前半から後半にアップ。「コントロールもまとまって、いい感触がある」と手応えをつかんだ。小嶋は「意識していない」と言うものの、振りかぶってから投げるまでの一連の右腕の使い方は能見そっくり。巨人戦7連勝中のキラーが、もう1人“誕生”した。

 すでに実戦テストも終わっている。11日の、みやざきフェニックス・リーグの巨人戦では松本、亀井も手玉に取るなど2回を完全投球。もう、不安はない。最後に見返すチャンスが巡ってきた。「やり返したいという気持ちは、すごくあります」。今季は開幕ローテ入りしながら、4月8日巨人戦(甲子園)で2回4失点でローテ落ち。中継ぎ登板した15日巨人戦(東京ドーム)でもラミレスに本塁打されるなど結果を出せず2軍落ちした。巨人相手には3試合に登板し、防御率17・36。リベンジの場は、自らの手でつかみ取った。

 中日とのファイナルステージに進めば、久保の状態次第では先発の可能性も浮上する。滑り込んだCSの舞台。4年目のドラ1左腕が、大一番で大輪を咲かす。【鎌田真一郎】

 [2010年10月15日11時35分

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