<オープン戦:日本ハム9-11ヤクルト>◇3日◇札幌ドーム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)の直球がさらに進化した。この日のヤクルト戦でオープン戦初登板。先発で4回を2安打5三振、無失点に抑えた。1回にいきなり国内最速タイとなる156キロをマーク。全70球中41球が直球系だったが、そのうち34球で150キロをオーバーした。このオフから取り組んできた肉体改造の成果を見せつけ、開幕投手が内定している25日の西武戦(札幌ドーム)へ死角は見当たらない。

 デモンストレーションの域を超越した、軌跡を描いた。ダルビッシュの右腕から放たれた、7球目。2番田中への2ストライクからの外角高めに大きく外れた直球に、スピードガンは156キロを示した。自身の国内自己最速タイ。昨年7月17日楽天戦で比較的、球速が出やすいとされるKスタ宮城で出したレコードに並んだ。球場は騒然となったが「あのボールがどうというよりも、真っすぐが全体的に走っていました。(最速の)スピードに関しては、特に何も…」とさらりと流す。

 全70球で41球が直球系。34球が150キロを超えた。5奪三振のうち見逃しで2個、空振りで1個を直球で奪った。進化した今季のすごみが、際だった。

 孤独な精進の日々の成果を証明した。このオフの約3カ月間。ほぼすべてを肉体づくりへと投資した。都内のジム、1月の宮崎などを拠点に、たった1人で修行のような自主トレを実施。周囲の関係者によれば、大きな負荷をかけたウエートトレーニングのメニューを加え、追い込んでいたという。キャンプまで1度もブルペン入りせず、一点集中で磨き上げた。

 過去に何度か増量を試みたが、マイナスの作用が起きた時もあった。特長のしなやかな動きを失い、シーズン中に減量するなど試行錯誤。その経験も生かした今回の挑戦で、答えが少し見えた。「(直球に)いいか悪いかは別にして、打者の反応は違う」。昨季のワンシームのように、一時は微妙に動く直球系に傾倒したこともあった。だが今季、投球の軸になる速球にこだわり、変身した。

 このオフ、原点回帰の出来事もあった。昨年12月。プロ入団時から師事したヒルマン前監督(現ドジャース・ベンチコーチ)が来日し電話で旧交を温めた。入団2年目の06年に本格的に目覚めたのが、体幹強化の重要性。長い年月をかけて太く、強く磨き上げた軸に、まるで鎧(よろい)をまとったような筋肉。一朝一夕ではなし得ないキレと力が1球、1球に宿った。

 行き着く高みが、見えない。「分からない、全然。今年にマックスを持ってきているわけじゃない。この先も考えている」。次回は10日中日戦(岐阜)で登板を予定している。「体を使うための頭を鍛えるというか、脳みそというか…。ブルペンではできているんですけれど」と、まだ伸びしろがあることを明かした。すべて一致した時に、何が起きるのか-。ダルビッシュは今季、突き抜けた光を放つ。