徹底マーク、受けて立つ-。中日森野将彦内野手(32)が6日、ヤクルトとの練習試合(ナゴヤ)で2安打を放った。チームは4安打1得点に終わったが、頼れる3番打者は難敵・由規から初回に先制打を放つなど気を吐いた。ここまで開幕前の実戦ではセ・リーグのライバル球団から徹底した内角攻めにあうなど、実戦19打席無安打が続いていたが「それを打てばいいんです」と返り討ちを宣言した。

 終わって見れば「スミ1」敗戦の中で森野の存在感が際立った。初回、四球をきっかけにしてつくった1死二塁のチャンス。マウンドにはチームが過去4年間で0勝2敗、防御率1・69と封じ込まれている快速右腕・由規がいた。

 「由規は、きょうみたいな初回の攻撃で(点を)取っていかないといけない。バットは振れてきた」。

 ギアが上がれば手がつけられない160キロ右腕は、エンジンがかかる前に打つべし。そんなベンチの期待に応えられるのが森野だ。2ボールからの144キロ、内角寄りの直球をたたく。鋭く中前へ抜けるタイムリーで先制点を奪った。9回には松岡から右前打。チーム4安打のうち2本をたたき出した。結果的に初回の1点のみに終わったが、敗戦の中に救いをもたせたのは森野のバットだった。

 ケンカ上等-。開幕直前のマルチ安打は他球団への“開戦宣言”でもあった。前日のヤクルト戦では和田とグスマンの「GW砲」が打線を引っ張った。その裏で、森野は実戦19打席ノーヒット中だった。

 「今年は特に厳しい気がするんですよね。昨日の石川でも外にスライダーはほとんど投げてこなかった。インコースばっかり。それが本当にシーズンでもそうなのか。それとも今だけなのか。いろいろ(駆け引きが)ありますよ」。

 前日も石川-相川のバッテリーはチェンジアップ、シンカーで徹底的に内角を攻めてきた。その傾向は2日、3日に対戦した巨人からも、3月29日、30日の阪神からもうかがえた。スタメン8人のうち右打者が6人並ぶ打線で、森野の役割は重要だ。当然相手のマークも厳しくなる。開幕前からの攻めはライバルからの「宣戦布告」でもあった。

 「そこまで(他球団を)痛い目に合わせてないと思うんだけどなあ。まあ、それを打てばいいんです」。

 森野はいたずらっぽく笑った。昨季は阪神戦の4割6分2厘を筆頭に、ヤクルト戦3割3分3厘、巨人戦3割1分6厘とライバル球団を痛い目に合わせてきた。やられたらやり返すのが勝負のおきて。だが、躍起になる相手を、さらに返り討ちにするだけの自信が森野にはある。あと5日。また1つ、竜党の不安が消えた。【鈴木忠平】