<オリックス5-1楽天>◇11日◇京セラドーム大阪

 オリックスの代役4番・後藤光尊内野手(33)が初回に先制2ランを放ち、史上9人目の全打順本塁打を達成した。打撃不振のT-岡田に代わり4番に入り、2安打3打点。チームは3発攻勢で楽天に3連勝。1分けを挟み5連勝と息を吹き返し、3位に浮上した。

 狙っていた。静かにトップへ引き上げられたバットがきれいな円を描いてボールをすくい上げた。初回2死二塁。後藤が永井からドーム右中間最深部へ先制2ラン。いきなり全打順本塁打を決めた。「時期的に疲れているし、体力的にフルスイングできるのは第1打席しかない」。リーチ状態なのは以前から知っており、今季2度目の代役4番のチャンスを逃さなかった。

 過去8人いる好打者に名前を連ねた。「9人ですか。意外と少ないですね」。昨年16本で、今年は5本目。飛ばない統一球になり、中距離ヒッター受難を口にした時期もあったが「いい打ち方をすれば出るというのはある」と胸を張った。

 プロ10年目で偉業に届いた。岡田監督も「全打順て、8番とか、9番もやってるいうことやろ」と後藤の道のりを思った。01年ドラフト10位という下位指名でオリックス入りし、はい上がってきた。「僕はコンプレックスの塊ですよ。常に力が足りないと思ってやっている。高校から投手して、社会人から野手ですし」。遠征帰りの早朝に新幹線で帰阪し休日返上で打つなど今でも自分に厳しい。ゲームキャプテンながら今季は2軍落ちも経験。「はげそうでした」。持ち前の反骨心ではい上がった。苦戦の続くチームを今、再び引っ張る。

 記録は打線の窮状を物語る苦肉策が生んだ。昨季本塁打王のT-岡田が不振で、岡田監督が今季2度目の欠場を決断。後藤を代役に選んだ。「いい仕事をしてくれた。Tが外れるんは選手も敏感に感じる。出てるもんがカバーする、やないけどな」。8回のダメ押し適時打と合わせ、2安打3打点。後藤は後輩へ敬意を払いながら復活を願った。

 「Tの気持ちをかみしめながら打ちました。本人は打つことで解決するしかない。あくまで代役。本当の4番はTですから」。

 代役4番で、1分けを挟み5連勝、約1カ月ぶりの3位に浮上した。苦しい時に働くからこそキャプテンである。【押谷謙爾】

 ▼オリックス後藤が打順4番で初本塁打を放ち、09年吉村(横浜)以来プロ野球9人目の全打順本塁打を記録した。最多本塁打は3番の23本。これまで打順4番は最も少なく、05年2試合、09年3試合、11年2試合で通算7試合目。通算73本塁打での全打順アーチは五十嵐(ロッテ)の26本、小川(オリックス)の65本に次いで3番目に少ない本数での達成となった。