<ロッテ1-10楽天>◇3日◇QVCマリン

 マー君、ホントすごいわ。楽天田中将大投手(22)が、ロッテ打線を7回7安打8奪三振無失点に抑えて14勝目(4敗)をマークした。18奪三振の前回登板の勢いそのままに、雨中のQVCマリンで仁王立ち。4位オリックスとのクライマックスシリーズ争いでも1歩も引かず、3位を死守。次回10日は、いよいよ日本ハム斎藤とのプロ初対決だ。

 降りそぼるグラウンドから引き揚げ、田中は考えた。「スプリットがダメだ」。1回、ロッテ先頭岡田にスプリットを左前に運ばれた。落ちがいまひとつ。自らのけん制悪送球もあり1死三塁を招く。ここで、雨脚が強まり一時中断。天が与えた14分間。「アジャストしないと」と決意した。

 再開後、今江、カスティーヨをスライダーで打ち取りピンチを脱した。2回からは「風が強い。そっちの方が安定する」と走者がいなくてもセットポジションで投げた。全90球でスプリットは7球だけ。スライダー、高速カーブを多めに、台風12号で勢いを増した敵地の風にも屈しなかった。

 「満足度は低いです。大量リードの中でも相手に合わせてしまった」と自己評価した。だが、森山投手コーチの見方は違った。「ゲームの中で修正できていた」。そのコーチが驚いたことがある。1週間ほど前。練習中に田中のお尻に目を奪われた。ぷにゅ。続いてチーム屈指の重量級、小山のお尻にも手を伸ばした。「小山と比べても変わらなかった。意外と肉付きがいいんだなあ」。

 雨にも負けず、風にも負けず。悪条件でも臨機応変、7回無失点に抑えられたのは“土台”を鍛え抜いたから。「パワーをつけようと思って」と田中。夏本番を迎えた7月後半から下半身のウエートメニューを増やした。3キロほどの体重増に成功し、100キロ近い体に変身。投球スタイルだけじゃない、自らのボディーも必要に応じ変える向上心が14勝目を呼んだ。

 星野監督も「自分でしっかり修正できる」と信頼を寄せた。田中は「ダルさんが『田中が投げるから』とスプリットを投げてたけど、スプリットがなくても組み立てられた」。そして、一呼吸置き「僕のと比べたら、ダルさんはまだまだ」とイタズラっぽく笑った。その日本ハム・ダルビッシュ以来の高卒5年以内の通算60勝に達した。次は10日、日本ハム斎藤との投げ合いが濃厚だ。「皆さんが楽しみにしている。互いに期待に応えたい」。06年夏の甲子園決勝の“再戦”。もちろん、負けるつもりはない。【古川真弥】