<ヤクルト7-4阪神>◇29日◇神宮

 また逆転だ、また若き3番だ。阪神に1点リードされて迎えた8回裏、ヤクルトは1死二、三塁の好機をつくり、川端慎吾内野手(23)が右翼線に逆転の2点二塁打を放った。川端は今回の3連戦の初戦に勝ち越しの満塁弾を打っており、優勝争いの佳境で見事な活躍ぶりだ。3戦連続の逆転勝利で4連勝。今日30日からの横浜戦に連勝し、2位中日が阪神に連敗すると、10月1日に優勝マジック11が点灯する。

 3打席の凡退が、川端を変えていた。8回1死二、三塁で迎えた第4打席。川端は思いきって狙い球を変えた。それまでの打席で、まったくタイミングの合っていなかった阪神能見のチェンジアップを待った。だから1球目の直球は見えてなかったが、運良くボールになった。2球目、真ん中低めに来たチェンジアップ。それを逃さずにたたける能力が、今の川端にはあった。逆転の2点適時打になった。

 阪神に2連勝して迎えたこの日、球場に行く前の寮で、スポーツ新聞とにらめっこしていた。「うちって逆転勝ちが一番多いんですね。確かに多いもんな」と表を見ながら言った。意識して臨んだこの日も逆転勝ち。「2回以降、完璧に抑えられてたけど、チャンスが絶対来ると思ってました。ベンチにそういう雰囲気があるんです。それに乗せてもらってます」と、立役者は3試合連続の逆転勝ちの余韻に酔った。

 今季、首位を走るヤクルトで最も成長を遂げた選手の1人だろう。春先、震災の影響でオープン戦が中止になり、無観客の練習試合になったことがあった。その時、少し集中力を欠く選手が多い中、練習から一振りも無駄にしない川端の姿があった。佐藤打撃コーチは「あの時から、今季にかける気持ちの強さを感じてたよ」と感心した。

 この日の一打に川端は「びっくりした。これまでは狙ってもうまくいかないことが多かったのに」と話した。自分でも戸惑う感覚のズレは、急成長の証しでもある。起用時に「つなぎの3番」と言った小川監督も脱帽だ。「失礼なことを言っちゃったね。今はれっきとした3番として機能してますよ」。勝負強い3番川端が、ヤクルトを優勝へとまた1歩近づけた。【竹内智信】