巨人坂本勇人内野手(22)が、高校時代を過ごした青森の雪景色と恩師の言葉に、原点に立ち返る決意を固めた。11日、青森・十和田市内での野球教室に参加した。前夜には八戸市内で母校の光星学院・金沢成奉総監督(45)らと会食。苦しんだ今季の打撃などについて語り合い、迷いを吹き飛ばした。雪が降る中で来季の活躍を誓った。

 野球少年に負けないぐらい、室内に坂本の声が響いていた。この日の野球教室では、マイクを手に小中学生70人の間を動き回って指導。時にはバットを手にスイングを実演してみせた。4時間に及ぶ熱血指導を終え「みんな純粋に野球が好きなんだと思った。触れ合って僕もこれから頑張ろうって気持ちになりました」と満面の笑みを浮かべた。

 少年たちだけでなく、坂本にも意義深い青森への旅になった。前夜、光星学院・金沢総監督、仲井監督らと八戸市内で会食した。坂本が「話を聞きたいです」と依頼した食事の席は、約4時間に及んだ。今季は統一球に苦しみ、打撃は迷いの連続だった。打撃成績も軒並み前年を下回り、納得のいかない1年だった。そんな悩み、疑問を恩師にぶつけた。

 話していくうちに坂本の迷いは吹っ切れていった。統一球による飛距離減に対応するため、ミートポイントを前にするなど試行錯誤を繰り返した。だが、これが迷いにつながり本来の打撃を見失った。だが、恩師との野球談議で「自分のポイントで打てばボールは関係ない」とのシンプルな答えに行き着いた。目指すところは3割6厘を記録した09年のフォームとし「自分のポイント、タイミングの取り方は変えなくていいと分かった。いい話ができた」と、きっかけをつかんだ様子だった。

 金沢総監督は、会話そのものを成長と受け止めていた。「(じっくり野球の)話をしたのは初めて。語り合えるようになりましたね。アマチュアの人間でも聞く耳を持つ。前はただの“がきんちょ”だったけど大人になったね」。苦しんだ分だけ成長した。同監督にとっては、それが一番うれしかったようだ。「来年は3割は打たないといけない。本塁打は最低でも20本。でも来年はやるんじゃないかな。食事している中で感じました」。来季の活躍に太鼓判を押した。

 野球教室後も外は雪景色だった。高校時代に体感していた、東北の冬。「寒い」と苦笑しながらも、充実感を漂わせて言った。「話をして間違ってないなと思ったし、来年は期待してくれていると思うので、応えられるようにしたいです」。第2の故郷で原点回帰し、すがすがしい表情で青森を後にした。【浜本卓也】