広島前田智徳外野手(40)が15日、丸佳浩外野手(22)を“相棒”に指名しトレーニングを行った。広島・廿日市市内の大野寮室内練習場で約1時間半ペアを組みノックとティー打撃を行った。野球談議を交えて濃密な時間を演出。高卒外野手としてチームを支えてきた男が、次代を担う18歳年下の後輩にエキスを伝えた。巧みな言葉で相手を乗せる意外な?

 一面も披露した。

 前田智と丸。世代の違う2人の世界が始まった。堂林、庄司ら若手とともに練習を行っていた丸に、突然お呼びがかかった。敷地内でトレーニングを行っていたベテラン前田智から、練習相手に指名された。

 誰もいない室内練習場で、ノックが始まった。ノッカーを務めた丸は「緊張しました」と、序盤は詰まった打球を連発した。だが、コツをつかむと先輩も納得のゴロを打ち続けた。

 「ノックうまいね。良いスピンだ」

 「タッチが良いね。何事もガツガツやったらダメだから」

 前田智から次々と、賛辞の言葉が飛び交った。極め付きは、丸と同じ千葉が生んだスターの姿に重ね合わせた“持ち上げ”ぶりだ。

 「全盛期の篠塚さんみたいだね」

 巧みなバットコントロールで首位打者に2度輝き、巨人で活躍した名選手だ。篠塚の全盛期を知らない丸にとっては、少しジェネレーションギャップを感じたかもしれないが、最高の褒め言葉に気をよくしたことは間違いない。

 30球のノックのあとはティー打撃だ。丸がトスを上げて前田智が打つ。そのセット間で気さくに話しかけ、極意を注入した。丸は「野球の考え方です」と会話の内容は技術面でも精神面でもなく、思考法だったと明かした。「前田さんは自分の考えを確立させている。今のは良い、これが悪いというのがある。僕はまだそれができていない」。通算打率3割を越える天才打者から、シーズン通してコンスタントにパフォーマンスを発揮できるためのヒントを授けられたという。

 40歳のベテランは、昨季ブレークした22歳にシンパシーを感じているのだろう。高卒下位指名ながら、外野手のレギュラーの座をつかんだ左打者。今後のチームを支えていく若手との“会話”でお互いを高め合った。自身は代打の切り札としてひと振りにすべて懸ける。丸は昨季131試合に出場しレギュラーを狙っていく存在。ベテランから若手へ-。伝統の力で赤ヘル軍団が復活する。【鎌田真一郎】