阪神藤川球児投手(31)が“投打逆転練習”の主役になった。沖縄キャンプ3日目の3日、投手は野手の、野手は投手のメニューを行う珍練習が行われた。能見や、岩田が守って、打つ。新井がマウンドで投げる。宜野座球場に異例の光景が広がった。

 「お互いの気持ちを知れば思いやりの気持ちが分かる。言葉や心のキャッチボールが重要。チームなんだから、自分だけいい球を投げればいい訳じゃない」

 和田監督がこう説明した特別な練習の中で、最も存在感を見せたのは投手キャプテン藤川だった。

 「最初から真剣にやった。集中してやらないと故障の可能性もあるから」

 ともすれば、レクリエーション的になりがちな練習の本当の意図を理解し、率先して大真面目に取り組んだ。まず、フリー打撃で圧巻の打撃センスを見せた。左打席で鋭い当たりを連発すると、野手も顔負けとなる投手陣最多3本の柵越えだ。

 ドッカーンと打ち込んだだけでなく、カミナリも落とした。投内連係では捕手、一塁を守って、だれより声を張り上げた。森田の声が小さかった場面では「声出せや、バカ野郎!」と怒鳴りつけた。三塁を守った岩田が判断を誤ると「めちゃくちゃやんけ、お前!」と指摘。そして、自分がミスをすると「すいません。もういっちょ、お願いします!」と頭を下げた。キャプテン球児が、その存在で緊張感を生み出した。

 「野手の人は打つ、守る、走るで集中する回数が多いから大変ですね。これから野球のことをもっと勉強する、きっかけになる」

 妥協なき練習態度と、全員をまとめようとする姿勢はまさにリーダーだった。【鈴木忠平】