阪神藤川球児投手(31)が9日、ブルペンで3日連続となるピッチング練習を終えた後、南球団社長に呼び止められた。「キャプテン、しっかりせえと言ったんだよ。ブルペンではいいけど、マウンドでしっかり抑えられるように教えてくれ」。球団トップが一選手に対し、他選手のレベルアップを命じる。異例のことだが、これが「キャプテン制」を導入した和田阪神の特徴だ。

 再教育リストに挙がったのは5年目の白仁田、3年目二神という両ドラフト1位右腕だった。

 投手キャプテンを任されている藤川も自覚は十分だった。場所をサブグラウンドに変え、青空の下で早速“球児塾”を開講した。

 「左肩を開かずに(左足に)乗っていく。そこから右足の蹴りが大事なんだ。そうすれば、ボールに角度がつく。右手で(ボールを)強くたたけるんだ」

 藤川が実演すると、たたきつけるようなリリースから、最後に右足が高く跳ね上がった。だが、白仁田が実践すると左肩が早く開いてしまう。「早い!

 早い!」。藤川の言葉に白仁田も、二神もうなずいた。

 「僕がプロに入って先輩たちのを見て、いいなと思ったことを言った。壁にぶつかって立ち止まっているからヒントになるかな」

 藤川は報道陣にこう言い残して球場を後にした。自分の財産とも言える技術を他の選手に教える。それほどまでに球団も、藤川も、今年は勝ちたいのだろう。

 藤川が去った後、屋内練習場に2人の右腕がいた。白仁田はネットに球を投げ、二神はシャドーピッチングを繰り返していた。頭には投手キャプテンの言葉が響いていたはずだ。

 「いいヒントをもらいました。全部、吸収したい」

 白仁田の声に力が込められた。もはや、選手の枠を飛び越えた藤川の存在が、投手陣を底上げしていく。【鈴木忠平】