魔球と心中覚悟!

 阪神岩田稔投手(28)が16日、沖縄・宜野座球場でキャンプ初めてフリー打撃に登板。金本、城島らを相手に快投した。独特の「動く直球」を中心に42球を投じ、安打性の当たりはわずかに1本。自慢のムービングボールで城島のバットをへし折り、順調な仕上がりを見せつけた。

 沖縄の曇り空に、城島の雄たけびが響き渡った。「あ~~、折った~!」。岩田がキャンプ初のフリー打撃登板。衝撃のシーンは40球目だ。意図したわけでもないのに、内角直球がカット気味に内へ切れ込む。城島のマスコットバットがへし折られた。雄たけびを聞いた岩田も苦笑いする。「(自然に)カットしてるんじゃないかな。じゃないと、あそこまで詰まらないだろうし」。打球はボテボテのゴロになって遊撃に転がった。

 岩田

 きれいな真っすぐを投げようと思って、動くんだったら仕方がない。力いっぱい投げると勝手に動くし、きれいに投げると弱い真っすぐになる。そんな球じゃ、打たれるのは目に見えているし。

 空振りの取れる直球習得を目指し、オフから投げ込みで「きれいな真っすぐ」に挑戦していた。イメージは自主トレを共にした巨人杉内の直球。ただ、師匠の域までの道のりは平たんではなかった。キャンプイン後のブルペンでもイメージ通りの直球を投げられないまま。自慢の「自然と動く直球」に磨きをかける方向に心は傾きつつある。

 フリー打撃では直球にスライダー、ツーシームを交えて42球。ストライク30球のうち、前に飛ばされた打球は14本。内野ゴロが11本で、安打性の当たりはわずかに1本だった。金本も城島、平野も、打ちづらそうにファウルを連発。凡打の山によって、岩田自身もムービングボールの威力を再認識したようだ。

 岩田

 シーズン中もあんな投球ができたらいい。このスタイルを崩さず、できれば真っすぐで空振りを取れるようになればいい。

 今季は能見と先発2本柱形成の期待がかかる。昨季は打線の援護にも恵まれず9勝13敗。08年以来、4年ぶりの2桁勝利は最低ノルマだ。和田監督は「打線うんぬんではなくて、打たない時は抑えればいい。打てないから勝てませんでしたではなく、勝てる投手になってほしい」と高いレベルを求めた。

 主戦への成長を求められ、岩田も自覚する。「(昨季と勝ち負けを)ひっくり返さないといけない」。自慢の魔球を携え「エース級」から「エース」へ脱皮を図る。【佐井陽介】