どや!

 阪神新井貴浩内野手(35)がキヨシ先輩に先制パンチを浴びせた。28日、駒大の先輩・中畑清監督(58)率いるDeNAと練習試合(沖縄・宜野湾)で初対戦。第1打席で右越えに「1号」を放ってみせた。2月中の1発は広島時代以来、9年ぶり。3月30日の開幕戦(京セラドーム大阪)では、虎の4番がゼッコーチョーで迎え撃つ。

 上がりっぱなしの中畑監督のテンションもさすがに落ちたに違いない。一塁ベンチのキヨシ先輩の視界を横切る新井の弾道が、新生DeNAへの宣戦布告の合図になった。

 「いい感じで振り抜けたんじゃないでしょうか。打った瞬間いったと思いました。まだ開幕は先なので、逆算していい調整をしていきたいですね」

 開幕まで1カ月あまり。練習試合とはいえDeNAとはこれが初対戦で、3月30日の開幕戦までは同15日の横浜スタジアムでのオープン戦1試合だけ。最初の一撃で脅威を与えた。

 なごやかムードで始まった。試合開始前にバックネット前にあいさつに走り、笑顔で談笑した。中畑監督は駒大の先輩だ。在学当時から目をかけられていたほど関係は長い。現在、プロ野球選手会の会長を務める新井にとっては初代会長という面でも大先輩にあたる。これまでもグラウンドで会うたび談笑していたが、今年からは敵と味方に立場が変わった。

 2回の先頭。左腕ブランドンの浮いた直球を強振すると、打球は悠々と右翼フェンスを越えた。フォローの海風がなくても間違いなく入っていた。

 「自分でも久しぶりの感触というか、振り抜き方でした。しっかりバットに乗ってくれましたね」

 初回に榎田が4失点する最悪の出だしだったが、すぐさま1点を返した。その後、中盤に打線がつながって同点まで持ち込んだ。4番打者にふさわしい流れを変える一打だった。

 本人にとっても記憶にとどめたい1本だ。右方向は「特に狙ったわけじゃない」と言うがキャンプで取り組んできた新打法の成果を出した。下半身に意識を置き、右足に重心を残しながら自分のポイントに引き込む。コースに逆らわずに体重をしっかり乗せて打ち返す。昨年は17本のうち右越えが1本。一昨年は19本中、ゼロ。09年の6月まで右翼に5本立て続けに打って以降、引っ張り傾向が強かった。

 和田監督が目を細める。「あれが本来の打球方向。得点圏の打席でも幅が広がる」とスプレーヒッターへ“回帰”を大歓迎した。片岡打撃コーチも「もともとポイントが近い打者なので、引っ張ろうとするとバットをこねることがある」と納得していた。

 2月中の対外試合でのアーチは広島にいた03年以来。阪神では初めて。2月下旬の仕上がりとしてはきわめて良好だ。キヨシ先輩との本当の勝負は開幕戦。少しキャラは違うが、虎のゼッコーチョー男が準備万端、待ち受ける。【柏原誠】

 ◆新井の昨季右本塁打

 5月1日ヤクルト戦(甲子園)の初回、先発村中が負傷降板した直後、松井光の初球140キロを右中間最深部へ2ラン。これが昨季17本のうち唯一の右方向弾。この時期、新井は絶好調で次戦の巨人戦(東京ドーム)では鳥谷、ブラゼルとクリーンアップ3連発。新井自身は3戦連発だった。