<オープン戦:中日3-1楽天>◇23日◇ナゴヤドーム

 中日山崎武司内野手(43=前楽天)が、戦力外になった古巣との初対戦で意地のアーチを描いた。6番DHで出場し、2回に塩見からオープン戦両リーグトップを独走する4号2ラン。7回にも左前打する恩返しの活躍で、星野監督も脱帽した。究極目標は5月にKスタ宮城で行われる交流戦。マー君撃ちでの「13球団制覇弾」だ。

 楽天を戦力外になったベテランが男の意地を見せた。2回の古巣との初対決初打席。山崎が塩見のフォークをとらえ、左翼席へ4号2ランをカッ飛ばした。星野監督も「武司の一番好きなとこに放ったなあ」と脱帽するしかない。これがヤマタケの生きざま、強烈な恩返し弾だ。「朝から120%の力でスイングするぞと思って家を出てきた。全打席、ホームラン打ってやろうってね。今日は公式戦のような緊張感があった」と興奮冷めやらぬ様子だ。

 05年の球団創設から主力として頑張った古巣に昨オフに戦力外通告を受けた。「本当はもう1年、仙台でやりたかった」。ロッカールームを整理しながら涙が止まらなかった。「まだできるところを見せたい」と楽天からのコーチ要請を断った。オープン戦の日程が決まった時から、今回の楽天3連戦で打つことが大きな励み。好調キープの要因でもあった。

 山崎

 恨みはない。7年間お世話になったから。ただあのユニホームを着たみんなと戦わないといけない寂しさはあった。でもこれがプロ野球選手の宿命。今日は“俺は元気だよ”って若い選手に見せたかった。

 昨年最終戦の退団試合に先発し「お立ち台で一緒に泣いてくれた」という塩見からは7回にも左前打。「涙をアダで返しました」と感謝を厳しさで伝えた。さらなる大目標が明確になった。

 「Kスタのお立ち台だね。これがこの1年で一番したいこと。田中将大の結婚祝いも打ったらんとあかん。見返すのはシーズンに取っておきますよ」と、どこまでも冗舌だ。楽天戦で1発を打てば13球団から本塁打を放ったことになる。5月、仙台での交流戦での実現へ、バットを研ぐ。【松井清員】