<オープン戦:ロッテ2-4日本ハム>◇25日◇QVCマリン

 崖っぷちの精神で開幕ローテをつかんだ。日本ハム吉川光夫投手(23)は、ロッテとのオープン戦最終戦に先発。6回5安打2失点と及第点の内容を見せた。伸び悩んできた6年目左腕が、精神面での成長を見せて先発ローテーション入りを確定。開幕3戦目となる4月1日西武戦(札幌ドーム)の先発に抜てきされる。

 ラストチャンスにかけていた。先発ローテーション入りを確定させるため、気持ちを前面に出したのは3回。先頭打者への四球をきっかけに1死一、二塁とされ、相手のクリーンアップを迎えた。「しっかり打者に向かっていくことを意識して投げられた」。逃げることなく真っ向勝負を仕掛けた。3番井口を一ゴロ、4番サブローを二飛に打ち取りピンチを脱出。思わずガッツポーズが飛び出した。

 前回18日のヤクルト戦(神宮)は2回3安打4失点と打ち込まれた。「1試合1試合、(イニングが)限られた試合の中で結果を出さないといけない」。昨年未勝利という自身の立場は、2度続けての失敗は許されない。そんな覚悟を持って立ったマウンドで、6回5安打2失点。しっかり先発の役割を果たし、結果を出した。そして、開幕3戦目となる西武戦の先発を手中に収めた。

 背水の陣で迎えた6年目は、弱気な自分を捨てた。昨年までは精神面が課題だった。打たれたくないという思いから制球を乱し、四球から崩れるパターンが目立った。「もう後がないと思っている。僕がやらないといけないという気持ちの面が今までと違う」。テンポ良くストライクゾーンを目がけて投げ込む。シンプルな思考で活路を見いだした。打たれることを恐れない気持ちが吉川を変えた。

 シーズンへ向けて課題も残った。「2死からの失点だった。そこを踏ん張れれば良かった」。6回は2死からの3連打で失点。降板後は表情も硬かったが、オープン戦とはいえ勝利投手となり、ウイニングボールを手渡されると思わず顔がほころんだ。「自分の持てる力を出して、チームの勝利に貢献したい」。期待の左腕が、今度は公式戦で08年以来の勝利をつかんで笑顔を見せる。【木下大輔】