<巨人0-4ヤクルト>◇30日◇東京ドーム

 ヤクルト石川雅規投手(32)が投じた97球目だった。坂本への初球、内角へのスライダーは三塁・宮本のグラブをかすめて左翼前へと転がった。9回1死から喫した初安打。この瞬間、史上初となる開幕戦での無安打無失点という快挙を逃した。続くボウカーにも右前打を許すと、左ふくらはぎがつってしまったため降板となった。完封も逃したが、試合後の石川はサバサバしていた。

 「あそこまで行ったんだから狙っていないわけはないけど…ボクは安打を打たれない投手ではなく、打たれてもホームにかえさない投手だと思っているから」。甘い球もあったが、腕を振って投げ、チームに勝利を呼び込んだ。「それが一番です」。石川は胸を張った。

 5年連続7度目の開幕投手で、4勝は金田正一、松岡弘、石井一久を抜いて球団新記録。石川にとって開幕を任させる意味とは何か。「今日勝つと負けるではチームに与える勢いが違う。144分の1かもしれないけど、今日にかける思いは強かった」。左打者に対し果敢に内角を攻めていった。「監督も今カード(の先発)は左3枚で行くとおっしゃっていた。次につなげるためにも攻めていくべきだと思った」。大記録にはならなかったが、エースとしての役割は十二分に果たす勝利だった。【飯島智則】

 ▼ヤクルトは石川、バーネットのリレーで完封勝ち。石川は9回1死から坂本に打たれるまでノーヒット。これまで開幕戦のノーヒットノーランはなく、8回を無安打に抑えた開幕投手は、9回先頭の清原(西武)に初安打を許した94年野茂(近鉄)以来。セ・リーグの開幕投手では初めてだ。また、ヤクルトの開幕戦完封勝ちは球団史上初。これまで開幕戦の完封勝ちがないのは現12球団ではヤクルトと楽天だけで、国鉄時代から通算63度目の開幕戦でようやく達成した。