<日本ハム9-1西武>◇30日◇札幌ドーム

 ルーキー監督の夢が、最高の形で始まった。日本ハム栗山英樹監督(50)が、西武との開幕戦で記念すべき初勝利を手にした。開幕投手に送り出した斎藤佑樹投手(23)が4安打1失点で完投すれば、「2番・一塁」で起用した稲葉が3安打猛打賞と攻撃型オーダーもいきなり機能。3回を除く毎回の13安打9得点で大勝した。22年ぶりのユニホームに袖を通した新指揮官が、6年ぶりの日本一奪回へ力強い1歩を踏み出した。

 “孝行息子”から手渡されたウイニングボールを、少しだけ恥ずかしそうにポケットへとしまった。栗山監督が、指導者人生の初陣を勝利で飾った。「監督がもらっていいのかなって。いいゲームだった。オレは何もしてない。選手たちがよくやってくれた」。控えめに振り返ったが、先発斎藤、2番稲葉は、昨季なかった栗山色。指揮官が決めた“覚悟”が、選手たちにしっかりと伝わっていた。

 大勝負だった。昨季6勝と実績のない斎藤を、開幕投手に指名した。だが22日のソフトバンクとのオープン戦、試合終盤に「お役御免」でベンチに下げようとした金子誠に、「斎藤が投げている間は守ります」と言われた。「そういうのが出たのかな。みんなが斎藤を勝たせようとなったのが大きかった」。この日の試合前には、「夢は正夢」と記した杯を人数分準備し、選手、スタッフ全員と水を飲み交わした。その儀式も、チームの一体感を高めるのに、一役買っていた。

 試行錯誤していたキャンプ中、シーズンへ懸ける思いを強くする出来事があった。ホテルの自室で何げなく手に取った、ファンからの手紙だ。一家で日本ハムを応援してきたが、その母を亡くしたというファンからのものだった。ファンにとって、愛する球団はいかに大切で、かけがえのない存在であるかが文面から伝わった。読み進めるたびに、胸を打った。涙が、止まらなかった。「ボロボロ泣いちゃった。野球の持つ力、意味を感じた」。この日も球場に到着すると、ファンがレプリカユニホームを着て、北海道神宮へ必勝祈願に訪れていたと伝え聞いた。「そういうものを感じて、大事に1試合1試合を戦います」。ファンの思いを監督が受け止め、監督の思いを選手が受け止めた。その結果が、開幕勝利につながった。

 最高の船出。それでもすぐに、真顔に戻った。「もう9回2死から明日(31日)のことを考えていた。終わったことは…ね。明日のことを考えるのが自分の仕事」。そう。夢はまだ、始まったばかり。【本間翼】