<中日9-0広島>◇31日◇ナゴヤドーム

 1277日ぶりの復活星だ。4年ぶりに日本球界に復帰した中日川上憲伸投手(36)が復帰1戦目のマウンドで白星を挙げた。広島打線を封じ込めて6回4安打無失点と好投。大リーグで悔しさを味わった男が古巣でよみがえり、高木守道新監督(70)に開幕2連勝をプレゼントした。

 ナゴヤドームに憲伸の雄たけびが帰ってきた。4回1死二、三塁。6番丸を133キロフォークで空振り三振に仕留めると、続く堂林をカウント2-2から外角カーブで空振り三振。ここぞの場面での奪三振。沸き上がる観客の声援を受けて、背番号11が右手を握りしめ叫んだ。

 最大のピンチを脱すると、危なげなく6回まで投げてバトンタッチ。球数は89球で最速は144キロだったが、多彩な変化球は健在。しっかりとコースに投げ分けて観客を魅了した。シーズンでは08年10月1日横浜戦(横浜)以来となる勝利。高木監督から開幕2戦目に抜てきされ、十分すぎる働きに川上自身も興奮を抑えきれなかった。

 川上

 自分でも信じられないくらい。いきなり勝ちが取れてチームが連勝できたことはボクの中ではいつも以上にうれしいですね。

 かつてエースと呼ばれた男は地獄を味わった。08年に大リーグ・ブレーブスにFA移籍し、1年目は7勝を挙げたが、翌年はわずか1勝。メジャー特有の滑るボールと異国でのコミュニケーションに苦しんだ。泥沼の9連敗を味わい「もう勝てないかもしれないと思った」と周囲に漏らしたこともあった。昨季は右肩痛の影響で登板ゼロ。迷った末に選んだのが古巣への復帰だった。

 川上

 やっぱり前から知ってるチームメートとスタッフの方がいるということが大きかった。

 久しぶりに戻ってきたナゴヤドームのロッカーは岩瀬と吉見の間。「家にいるよりも居心地がいい」と冗談が飛び出すほど、生まれ育った“わが家”も変わっていなかった。

 「プレッシャーがあっただろうけど、なんとか勝ってくれんかとマウンドに送った。ピンチがありながらよく切り抜けたよ」。2日連続で投打がかみ合っての勝利に高木監督も笑いが止まらなかった。【桝井聡】

 ▼中日川上が国内では08年10月1日横浜戦以来の勝利。大リーグから日本に復帰して登板した投手は川上で通算17人目だが、復帰戦で勝利投手は66年村上雅則(南海)03年伊良部秀輝(阪神)06年高津臣吾(ヤクルト)10年大家友和(横浜)に次いで5人目。先発では伊良部、大家に次ぐ3人目となった。