<広島2-6阪神>◇9日◇ハードオフ新潟

 阪神4連打の締めはマット・マートン外野手(30)だ。7回、左中間最深部への2点三塁打。一挙5点を奪う逆転劇を痛快に締めた。実に17試合ぶりの複数安打に、本人は「去年以来じゃないの?」とおとぼけのジョークを飛ばして笑った。もう心配ない。2年連続最多安打男のエンジンが、うなりをあげてきた。

 これで少しでも肩の荷を下ろしてもらえれば…。マートンは弾丸ライナーで美しく左中間を割った。2点リードとした直後の7回2死一、二塁。この回5得点の逆転劇を締めくくったのは、不振に苦しむ助っ人だった。岸本の142キロ真ん中直球をミート。4連打となる左中間2点三塁打で広島にトドメを刺した。4月19日ヤクルト戦以来、実に17試合ぶりのマルチ安打。照れ笑いで冗談めかした。

 マートン

 2本打ったのなんて、去年以来じゃないの?

 前の打者3人がいい形でつないでくれたので自分も勢いに乗れたね。

 ここ10試合は40打数6安打(打率1割5分)と低迷。ストライクゾーンの広さに目を丸くし、あからさまに不満をあらわにする場面も目立っていた。この日のフリー打撃でもタイミングが合わない。先に手首を返してしまい、バットの先っぽに当たる凡打も複数回あった。体重移動を確認しようと、フォロースルーの際に軸足の右足をわざと上げる方法にも取り組んだ。試行錯誤の連続…。それは苦悩の証しだ。

 練習中、指揮官はそんなM砲のガス抜きを試みた。2人は通訳を交え、身ぶり手ぶりで対話。「ちょっといろんなことにイラついている、というのがあったから」とは和田監督。マートンは指揮官の配慮に笑顔、笑顔…。「精神的にリラックスできた」と感謝した。

 どんな時でも家族が笑顔をくれる。4月27日、愛妻と2男1女を連れて大阪市内のユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れた。翌28日は長男マイカ君の3歳の誕生日。映画「カーズ」に出てくる車のおもちゃ、スパイダーマンのアクションフィギュアなど、思いを込めてプレゼントを選んだ。遠征で家を空ければ、テレビ電話で「パパはどこにいるの?」と尋ねてくる子供たちがいる。だから、つらい状況でも耐えられる。

 マートン

 毎日毎日、新しい1日が始まる。できることをやっていきたい。

 柔和な笑顔が不振脱出を予感させる。指揮官は「何がきっかけになるか分からないけど、これで落ち着いてくれれば」と期待。チームも今季初の2試合連続2桁安打と上昇の兆し。まだまだシーズンは長い。マートン猛打伝説は12年もきっと続く。【佐井陽介】