<阪神1-3日本ハム>◇16日◇甲子園

 やっぱりこの男には「聖地」が似合う!

 日本ハム中田翔内野手(23)が甲子園初タイムリーでセ・パ交流戦開幕勝利に貢献した。16日の阪神戦で1点リードの3回1死一塁、左越えに適時二塁打を放った。甲子園ではここまで8打数1安打と消化不良が続いていたが、この日は初回にも左前打で初のマルチ安打も記録。不振脱出のきっかけが欲しい主砲の一打が決勝点となり、チームは勝利し連敗を3で止めた。

 甲子園の大歓声が、一瞬にして悲鳴に変わった。強烈な打球が、44歳の鉄人の頭上を襲った。3回だ。打席には日本ハムの中田。カウント2ボール1ストライクからの4球目、阪神スタンリッジの直球を思い切り引っ張った。一直線に外野フェンスめがけて打球が伸びていく。「打った瞬間はヒットになると思った。でも、ちょっと弾道が低かったのでどうかな…と」。左翼を守っていたのは、中田が“同郷・広島の師”と仰ぐ金本。その金本はフェンスにぶつかりながらも捕球できず、これが決勝点となる適時二塁打となった。

 この日の練習前、栗山監督が野手ミーティングに顔を出した。「みんな高校野球をやってきて、ここで交流戦が始まるというのも何か意味がある。(高校時代のように)負けたら終わりという戦いを24試合していこう」。指揮官の熱い言葉は、中田の胸にも響いた。大阪桐蔭高時代、高校生離れしたパワーで甲子園を沸かせた“怪物”も、プロではこの日が甲子園初タイムリー。「雰囲気に圧倒されるものがあったけど、自分自身も興奮した状態で打席に立てたので良かった」。チームの連敗を止める一打で、「4番中田」の存在感をしっかりと敵地に刻んだ。

 開幕から不動の4番を任されながら、打率は1割6分と低迷している。打撃成績ではパ・リーグで規定打席に到達している32人中、1番下を独走中。少しでも調子が上向きになると、打球を上げようと“パワーヒッター”の欲を抑えられない。打撃好調の陽岱鋼と自分とをビデオで比較し、修正点を模索したこともあった。「ボールがしっかり見えた」というこの日は、約1カ月ぶりとなる3試合連続安打。1回の第1打席でも左前打を放つなど4打数2安打で、浮上のきっかけをつかみつつある。

 4番の復調で、交流戦で好スタートを切った栗山監督は「聖地・甲子園で勝ちからスタートできたのは、本当に安心材料になる」と、ほっと胸をなで下ろした。交流戦は、残り23試合。高校野球のごとく、一戦必勝の全員野球で白星を追い続ける。【中島宙恵】

 ◆中田と甲子園

 大阪桐蔭時代は1、2年夏と3年春に出場し、計10試合37打数12安打11打点。打率3割2分4厘、4本塁打をマークした。1年夏の05年1回戦(対春日部共栄)では、5打数4安打3打点の打撃だけでなく、背番号17で救援マウンドに立ち最速146キロを記録。準決勝では駒大苫小牧の田中(現楽天)に3打数1安打。2年夏の2回戦では早実の斎藤(現日本ハム)に3三振を喫したが、3年春の2回戦(対佐野日大)では大会史上10人目の2打席連続本塁打を放った。プロ入り後は、昨年の交流戦2試合に出場し、計8打数1安打だった。