<広島0-1楽天>◇16日◇マツダスタジアム

 楽天辛島航投手(21)が圧巻の投球でチームの6連勝と3位浮上に大きく貢献した。交流戦の「開幕投手」を任された広島戦で、7回1死まで無安打投球。0-0のまま迎えた9回に2四球を与えて降板したが、8回1/3を1安打無失点に抑えた。5月1日以来のプロ2勝目は逃したが、3試合連続の好投で防御率は1・23まで下がった。星野仙一監督(65)が期待を寄せる4年目左腕が、目覚ましい成長でチーム躍進の原動力となった。

 サヨナラ負けのピンチにも、星野監督は穏やかな笑みをたたえていた。0-0で迎えた9回。1死二塁からこの回2個目の四球を与えた辛島が、後をリリーフに託してベンチに下がった。117球の熱投を演じた左腕は、何度も額の汗を拭きながら無念さを押し殺した。だがもちろん、星野監督に怒りの表情はない。延長戦を制すと「辛島が少しは成長したな。あそこまで頑張ったし、0で抑えているのは良いこと」と、6連勝を呼んだ21歳の奮投を真っ先にたたえた。

 辛島は序盤から完封ペースで突き進んだ。2、3回に1個ずつの四球は与えたが、1本の安打も許さない快投が続いた。中盤に佐藤投手コーチから「もうちょっと下を使って」とアドバイスされ、それを実行してからはさらにスキがなかった。7回1死からニックにこの日の88球目を左前に運ばれて初安打を許し、惜しくも快記録はならず。「バテました。反省が多いです」と苦笑いしたが、9回途中の降板までに2本目の安打は許さなかった。

 4年目の今季、期待通りの成長を遂げている。プロ初先発だった1日の西武戦で初勝利を挙げ、2試合目の8日西武戦も敗れはしたが7回2失点。3試合目のこの日は、キレのあるチェンジアップが低めに次々と決まった。「チェンジアップはベースの中で低めに、といつも言われている。試合でそれができたのは良かった」。ゆったりとしたフォームから力をためて投げ込む140キロ台のストレートも走っていた。緩急を存分に使った投球は、投げ合った広島バリントンにもひけを取らなかった。

 打線の援護がなく、今季2勝目はつかなかった。だが11回にフェルナンデスが決勝打を放ち、チームは6連勝。フェルナンデスは「とてもいい試合だった。辛島に勝ちがつかなかったのは残念だが、今日のような投球をすれば次は必ず勝つことができる」と左腕の好投を褒めちぎった。「まだすごく悪い時というのがない。そういう時にどうするかが問題」と高いレベルの課題を掲げる辛島は、一流のローテーション投手への階段を着実に上っている。【大塚仁】