<中日1-1日本ハム>◇10日◇ナゴヤドーム

 日本ハムは勝利目前で手痛いドローに持ち込まれた。10日の中日戦は1-0でリードのまま9回裏を迎えたが、最後に同点に追いつかれた。先発の武田勝投手(33)は6回1/3を3安打無失点に抑えて救援陣につないだが、5番手で登板した守護神・武田久投手(33)が抑えに失敗。武田勝の4月29日楽天戦以来となる5勝目はならず、ナゴヤドーム初勝利も消えた。

 汗をしたたらせた守護神が意地で、踏みとどまった。最悪の事態を回避したのが救いだった。1-0の無失点リレー目前の9回。栗山監督が全幅の信頼で送り込んだ武田久が沈んだ。先頭荒木を四球で歩かせたのが、会心勝利を逃すきっかけになった。1死は奪ったが、2本の単打を重ねられて満塁。井端の遊ゴロの併殺崩れで追いつかれた。逆転負けは阻止したが、ショッキングな結末だった。

 指揮官は気丈に、敗戦の責任を一身に背負った。

 栗山監督

 誰が悪いじゃなく(選手らに)申し訳ない。最後に追いつかれたことより、終盤のチャンスで(追加点が)取れなかったことが大きい。

 今後へ尾を引きそうな一戦になった。しのぎ切っていれば、7回途中無失点と快投した先発武田勝に、登板6戦ぶりの白星が付いていた。チームも貯金を今季最多11へと伸ばせていた。交流戦優勝争いでも、この日首位巨人が敗れていただけに、逆転Vの可能性が膨らむはずだった。マイナス要素たっぷりだが、最大の懸案事項は、5月30日に右膝炎症から復帰した武田久の暗雲だ。

 カムバック5試合目。過去4試合はすべて無失点で切り抜けてはきていたが、内容は本来の出来ではなかった。5試合で計4四球。精度の高さが持ち味だが、精彩を欠いていた。投手を中心とした守備力が、近年の戦闘スタイルの1つ。軸になってきた絶対的クローザーで勝ちパターンをモノにできなければ、3年ぶりペナント奪回を目指す今後の展望も暗礁に乗り上げる。

 栄光と挫折を知る武田久だけに、こみ上げる思いを抑えながら、言い訳は封印した。「(四球の)先頭が…」とだけ言葉を発し、黙って結果を受け止めた。「すみません」と報道陣の質問を遮り、重苦しいムードのバスへ乗り込んだ。立ち止まれることが許されない、戦いは続く。闘志を秘め、大仕事が与えられる名誉挽回のチャンスを待つ。【高山通史】