<西武3-4阪神>◇14日◇西武ドーム

 ギャンブル成功、所沢のミラクルや~。2回までの3失点はこれまでなら致命傷。そこはコツコツ返して7回に同点、9回にビックプレーで勝ち越した。なんと3点差逆転勝ちは2年ぶりの快感。実は怖いミスもあったけど、結果がすべて、願ってもない勢いを呼んだ。さあ今度こそ、乗っていくで~。

 がむしゃらに、泥臭く、リスクもかえりみず、決勝点をもぎ取った。同点の9回1死一、三塁。金本、新井が連打でつくったチャンスをものにしたのは若虎たちの勢いだった。三塁走者は田上健一外野手(24)、打席には大和内野手(24)。フルカウント。ここでベンチは「当たりGO」のサインを出した。バットにボールが当たった瞬間、スタートを切れ-。ライナーで併殺となれば一瞬で好機は潰える“ギャンブル指令”が下された。

 若さゆえの勢いは、ベンチの「賭け」をも上まわった。田上は西武ウィリアムスが投じるとほぼ同時にスタートした。大和が必死に食らいつくと打球はライナーでウィリアムスのグラブ付近を直撃し、こぼれた。ウィリアムスが白球を拾い直した時、すでに田上は本塁へ駆け抜けていた。

 「ちょっと早すぎましたね。反省しないといけません。大和がよく、当ててくれました」

 田上はばつが悪そうに苦笑いした。もし大和が空振りしていたら…?

 完全な勇み足も、勢いで帳消しにした。これこそ、阪神に欠けていた部分か。貧打にあえいでいた打線に活路が開けた瞬間だった。

 「また、やらないといけないから、詳しくは言えないんだけど、ああいう点の取り方しかないかな。2人が役割を果たしてくれた。今のチームに必要な部分だと思う」

 “バクチ師”和田豊監督(49)が振り返った。前日は不振と暴言騒動のマートンを3試合ぶりにスタメン復帰させたが、2安打で完封負け。珍しく「心配どころの話じゃない。打席で気が出ていない」と厳しく言った。一夜明け、指揮官は大きく動いた。マートンをわずか1日でベンチへ戻し、昇格させたばかりの野原祐を1番で先発起用した。

 すると、確かに打線には「気」がよみがえった。2回までに3点リードを背負う展開も、西武西口に食らいつき、追いつめ、最後にひっくり返した。

 和田監督は“カウンセラー”ばりの配慮も見せた。試合前にはマートンと球団ブース内で長時間に渡り、話し合った。

 「その都度、いろいろな話し合いを持ちながら何とかよくなってほしい。最後はああいうスイングができていた。また、本来のスイングが出てくると思う。昨日とは全然、違う」

 8回、代打で出場したマートンの打席に、指揮官は前日までとは違う“兆し”を感じていた。交流戦は残り2試合。宿舎出発前のミーティングでは「残り、全部勝つぞ!」と誓い合った和田阪神。執念で奪った白星は再出発にふさわしい。【鈴木忠平】

 ▼阪神の3点差以上逆転勝利は、10年8月25日広島戦(京セラドーム大阪)で5点差を逆転して以来2年ぶり。今季の逆転勝ちはこの試合まで、2点差が3度、1点差が4度だった。昨季は2点差が7度、1点差が17度あったが、3点差以上はなかった。今季は5月30日ロッテ戦(甲子園)で最大6点差を追いついたが勝ち越せず、引き分けていた。