<阪神6-3中日>◇23日◇倉敷
阪神桧山進次郎外野手(43)が代打打点の球団記録に並んだ。8回、1死満塁で登場し、左前に約2年ぶりの2点適時打を放った。「代打の神様」八木育成チーフコーチの持つ98打点に並び、セ・リーグでも3位タイに浮上。八木コーチの出身地・岡山で肩を並べ、球団在籍最長21年目の生きざまを見せつけた。
ついに、この瞬間がやってきた。時を超えて2人の神様が重なり合った。1点リードの8回1死満塁、中日武藤の外角ストレートに芸術的な流し打ちで対応した。打球は左翼前に弾んだ。勝利を決定づける2点タイムリー。貴重な一打は代打通算98打点目。球団最多の八木(現育成チーフコーチ)に並ぶ、メモリアル安打だった。
「八木さんとの縁を感じる。岡山でヒーローインタビューを受けるというのもなかなかないし。ずっと背中を見て、学ばせてもらったことが多いから」
八木氏の出身地である岡山で記録に到達した。不思議な因縁を感じずにはいられなかった。この夜ばかりは桧山も感慨に浸った。
“先代”の背中を見ながら、一振りに生きる男の姿勢を学んできた。その1つに「前後裁断」の境地がある。日々、激しく上下動する打率、積み重なっていく記録、桧山は野球の宿命とも言えるこの数字を、頭から排除しているという。
「数字のことを周りから言われても、一切頭に残していない。だって、その日、打席に立てるかどうかさえ、自分ではわからないんだから」
打っても、打てなくても、あるのは目の前の一瞬のみ。だからこそ、桧山のスイングはいつも変わらないのだろう。だからこそ、ファーストスイングから、あれほど力強いのだろう。
1週間前、球団2位の遠井吾郎に並び、そして、この日、八木に並んだ。「代打の神様」の系譜はそのまま、タイガース生え抜きスターの系譜でもある。だから、桧山は先人について知ろうとする。「仏のゴロー」と呼ばれ、誰からも愛された故人・遠井氏のことは現OB会長・川藤氏から聞いたという。
「面識はないけど、どういう方かは川藤さんに聞いた。もちろん、記録を目指してやってきたわけではないけど、そういう歴史は大事にしていかないといけない。重い?
重くはないよ。そういうものを引き継いでいかなければいかないと思っている」
数字を積み重ねてきただけではない。阪神の歴史を背負って、ここまでたどり着いた。「代打の神様」-。第三者から見れば、少し大げさなフレーズかもしれない。ただ、勝っても、負けても、ファンの期待を受け止め、球団の看板を背負って戦ってきた男にとっては、これほどふさわしい称号はないだろう。【鈴木忠平】



