阪神が「ミスター・タイガース」こと元4番打者、掛布雅之氏(57)の臨時コーチ招聘(しょうへい)を検討していることが3日、明らかになった。優勝が完全消滅したBクラス低迷の大きな原因は打撃の不振。球団初のGMに就任する中村勝広氏(63)はOBの全面協力を得て猛虎再建へ向かう決意であり、早ければ今秋か来春のキャンプで猛虎打線再生に協力を仰ぐプランが浮上。実現すれば、掛布氏は24年ぶりにタテジマのユニホームに袖を通すことになる。

 「ミスター・タイガース」が再び、猛虎のユニホームに袖を通す可能性が出てきた。チームは前日2日に優勝の可能性が完全消滅。原因の1つに打撃陣の不振が挙げられる。球団首脳によれば打開策の1つとして今秋か、来春キャンプで掛布氏に臨時コーチを依頼するプランがあるという。

 掛布氏は74年に入団するとセンス抜群の打撃と華麗な内野守備で「ミスター・タイガース」と呼ばれ、チームの主力として活躍した。85年には4番打者として、バース、岡田(現オリックス監督)とともに強力クリーンアップを組んで日本一の立役者となった。決して体は大きくなかったが、左翼スタンドへ本塁打をたたきこむ芸術的な流し打ちなどでファンを魅了した。88年に引退した後は米マイナーリーグの臨時コーチなどを経験したが、国内での監督、コーチの経験はなし。ただ、天才的な打撃技術とともに、理論にも定評があり、シーズン中にも何人かの選手が掛布氏にアドバイスを求めることもある。

 阪神は明日5日の臨時役員会でOBの中村氏が球団史上初のGMに就任する。それを受けて8月31日には川藤OB会長が「できる限りのことはやらせてもらう」と全面バックアップを約束した。球団関係者によれば、中村氏はこれを非常に喜んでおり「彼とは盟友だから。心強い。全OBによる、全共闘体制で強い阪神をつくりたい」と一致団結して猛虎再建プランを推し進める決意を示しているという。中村氏は掛布氏とはコーチと選手の間柄で戦ったこともある。オリックスGM時代の06年には掛布氏を臨時コーチとして春季キャンプに招くなど、手腕を評価しているという。

 現在、レギュラー陣では打率トップが鳥谷の2割6分7厘、本塁打最上位はブラゼルの11本と寂しい限り。ドラフト1位ルーキー伊藤も1軍出場15試合でわずか4安打とプロの壁にはね返されるなど、若手の伸び悩みが目立つ。突然、襲った主力打者の打撃不振は高齢化、統一球などさまざまな要因が考えられるが、打線復活なくしてはチーム再建は成し得ない。長らく現場を離れていた超大物OB掛布氏の臨時コーチ招聘プランは強力な“切り札”だ。

 ◆掛布雅之(かけふ・まさゆき)1955年(昭30)5月9日、千葉市出身。習志野2年夏に甲子園出場。73年ドラフト6位で阪神入団。75年に三塁のポジションを獲得し「ミスタータイガース」と呼ばれるとともに球界を代表する強打者に成長。79年に48本で初の本塁打王。85年に40本塁打、108打点で日本一に貢献。その後は故障に苦しみ、88年に33歳で引退。通算1625試合、1656安打、349本塁打、打率2割9分2厘。本塁打王3度(79、82、84年)打点王1度(82年)最多出塁2度(81、82年)ベストナイン7度、ゴールデングラブ賞6度。現役時代は175センチ、77キロ。右投げ左打ち。