<コナミ日本シリーズ2012:巨人8-1日本ハム>◇第1戦◇27日◇東京ドーム

 巨人が4番主将のバットで大勝発進だ。4回無死二塁、阿部慎之助捕手(33)が中前に技ありの適時打。この先制点を足掛かりに一挙4点を奪い、パ・リーグ防御率1位の日本ハム先発吉川をKOした。阿部は5回にも適時打を放ち、2安打2打点の活躍。先発野手全員安打の14安打8得点の猛攻撃を演出した。阿部は09年の日本シリーズから、出場3試合連続でV打点。長嶋、王、清原ら歴代の「シリーズ男」たちも成しえなかった、史上初の快記録をつくった。

 温泉よりもゴルフよりも、やっぱり野球がいい。またしても、慎之助が決めた。4回無死二塁、白木のバットをリズミカルに振りながら構えると、外角低めへ落ちるカーブに目いっぱい、腕を伸ばした。腰を落とし、最後は右手一本で拾い上げて中前へ落とした。「後ろにつなぐ意識で引っ張れるボールを待っていた。ボール球だったけど、うまく引っかかってくれた」。日本シリーズの始まりを告げる先制適時打になった。

 勝負どころで粘りを見せた下半身。その先端はボロボロだった。CSファイナルステージ第5戦で左足親指の爪に自打球を当てた。しばらくもん絶したが、途中交代の選択肢など主将には存在しない。内出血で真っ赤に腫れあがった親指の爪に注射針で5カ所、穴を開けて血を絞り出した。その日は靴も履けず、サンダルで球場を後にするほどだった。だが「やるしかないでしょ。爪が1つ取れても死ぬわけじゃないから」と、一切の弱音はなかった。

 けがには、めっぽう強い。その限度は人並みをはるかに超えている。慢性的に痛みを抱える両足首においても同様だ。

 阿部

 俺の足首は医学では解明できない。ドクターから、こんな状態でやったら壊れるとか、手術をした方がいいって言われ続けてきたけど、今こうやってプレーできている。俺の場合は、できちゃうんだよ。

 かつて真顔で話した持論は、今でも実証し続けている。CSファイナルステージも6連戦フル出場。1日だけ休養日を挟み、24日から全体練習にも参加した。日本シリーズ開幕前日は「しびれる試合を、今年は、まだできるんだから幸せだよ。もし(シーズンが)終わっていたら温泉に行くか、ゴルフでもしてるよ。でも、仕事が野球選手だから野球がやれてることが一番いい」と、豪快に笑い飛ばしていた。

 日本一を達成した09年の第5戦、第6戦に続く決勝打で、日本シリーズ出場3試合連続V打点は史上初。さらに、5回の第3打席でも打点をマークし、主将が2打点以上挙げればチームは公式戦33連勝の好データを並べた。この日も例外なく、14安打8得点の起爆剤の役割を全うし「今日のことは今日のこと。また、明日も大事だから」と、締めくくった。3連敗の窮地から、はい上がって進出を決めた頂上決戦。今度は順調に第1歩を踏み出した。その先頭に大将の慎之助がいることは、もはや言うまでもない。【為田聡史】

 ▼阿部が先制適時打を含む2安打、2打点。シリーズで阿部の勝利打点は、前回出場した09年日本ハム戦の第5戦サヨナラ本塁打、日本一を決めた第6戦先制二塁打に次いで3度目。シリーズで勝利打点の多い選手は長嶋(巨人)11度、秋山(ダイエー)7度、清原(巨人)7度、王(巨人)6度、柴田(巨人)6度がいるが、出場した3試合続けてV打を放ったのは阿部が初めて。今季、阿部が打点を挙げた時の巨人は公式戦が49勝6敗4分けで、CSは1勝0敗。2打点以上のケースは公式戦33勝1敗、CS1勝0敗で、4月26日DeNA戦から33連勝となった。