阪神平野恵一内野手(33)が10日、国内FA権を行使することを表明した。球団側との残留交渉は不調に終わった。今季は打撃不振で、出場機会が減少。宣言残留の可能性は低く、他球団に活躍の場を求めることになった。西岡剛内野手(28=ツインズFA)の入団は決定的だが、内外野守れるユーティリティー・プレーヤーの流出は痛い。

 和田阪神に激震が走った。今季、国内FA権を取得した平野が球団サイドに自らの意向を伝えた。それは権利の行使という結果だった。

 平野

 いろいろ悩んだ結果、決断しました。他球団の評価も聞かせていただき、阪神も含めて、自分を一番必要としてくれる球団でプレーさせていただきたいと思います。

 交渉した高野球団本部長によると、シーズン終了後に水面下で3度、残留交渉したという。球団は慰留に全力を尽くしたが、交渉は不調に終わった。前日9日が最後の話し合いとなった。

 平野は打撃不振に苦しんだ。2年前には打率3割5分のハイアベレージを記録したが、今季は打撃不振で2割4分5厘にまで降下。チームは若手を起用する方針に切り替え、出場機会は減った。

 来季はさらに不利な状況に陥ることが予想される。

 球団は今オフに大型補強を敢行する方針を打ち立てた。西岡の入団が決定的。さらに外野手の主軸として、福留の獲得にも動いている。補強に成功すれば、平野の出番が激減するのは確実。他球団に出場機会を求める流れになった。球団サイドも、退団を覚悟している。高野球団本部長は「宣言しての残留は、考えられない。これまでも残ってくれるよう努力したつもり。今は言葉がない。ショックです」と沈痛の面持ちだった。

 今後はFA交渉が解禁となる15日以降に、動きだすことになる。今季年俸1億9000万円(推定)の高給がネックになるが、内外野ともに守れるのは魅力だ。打撃が復活すれば、まだまだチームの中心選手としての活躍が見込める。西岡獲得を最優先に二遊間補強に動く古巣のオリックスなど複数球団が興味を示す可能性がある。

 平野は08年にトレードで移籍。ガッツあふれるプレーで虎党の人気も高かった。和田監督も「本来の打撃ならば、二塁のレギュラーは間違いなくケイイチ(平野)だ」と信頼していたほど。それだけに、平野の流出危機はチームに動揺を与える。

 ◆平野恵一(ひらの・けいいち)1979年(昭54)4月7日、神奈川県川崎市生まれ。桐蔭学園で甲子園に出場。東海大から01年自由枠でオリックス入団。内外野を守れるマルチプレーヤーにして、フェンス激突にもひるまないガッツマンとして台頭。07年オフ阪神に浜中ら2対2のトレードで移籍。10、11年にゴールデングラブ賞、ベストナインを獲得。169センチ、67キロ。右投げ左打ち。