年俸アップで景気のいい話が出てくるかと思いきや、次から次へと飛び出したのは、ちょっぴり弱気な発言だった。日本ハム中村勝投手(20)が29日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、570万円増の1350万円でサインした(金額は推定)。「来年こそは1年を通してやりたい。技術も体力面もレベルを上げて、キャンプでアピールしていかなければ」と、表情を引き締めた。

 シーズン序盤は「力に頼ってしまった」と投球フォームを崩し、栗山監督の期待に応えられずに苦しんだ。だが打者6人に対し、5奪三振と活躍したフレッシュ球宴を機に、戦いの舞台は1軍へ。後半はローテ入りして2勝2敗、防御率1・79と安定した投球を見せ、巨人との日本シリーズでは、第4戦で同じ20歳の宮国と緊迫した投手戦を演じた(7回無失点)。「いい経験をさせてもらったので、来年に生かさなければ」。年明けに温暖なタイで行う自主トレで、さらなるレベルアップを目指す。

 だが優しい性格同様、言葉は控えめだ。今季開幕投手を務めた斎藤は、シーズン終盤をファームで過ごしており、中村も来季の大役を狙える位置にいる。しかし、5秒間悩んだ末、「…他に適任な人がいるので」とポツリ。さらに入団が確実な160キロ右腕、ドラフト1位花巻東・大谷についても「投げる球では勝てないですからね…。入ってこられたら困る部分はあります」。冗談交じりに“白旗”を上げた。

 もちろん、心に秘める思いは強い。「1年間1軍で投げること。そうすれば(数字は)それなりについてくる」。先発ローテの柱へ。言葉ではなくプレーで示す。【本間翼】