鉄人から藤浪へ、愛の訓示!

 昨季限りで現役引退した阪神OBの金本知憲氏(44)が19日、兵庫・西宮市内の阪神寮「虎風荘」で、寮生を対象に講義を行った。虎で10年間プレーした大先輩ならではの厳しくも愛のある話は、約1時間に及んだ。ドラフト1位の藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)、同2位の北條史也内野手(18=光星学院)ら新人も、鉄人の言葉に大きな感銘を受けていた。

 寒空の夕方、虎風荘の一室から明かりが漏れる。室内では金本氏が、藤浪、北條に問い掛けていた。「ユニホーム着て何もしてないのに、新聞に大きく載るのは恥ずかしくないか?」。北條が「恥ずかしいです」と答えると、金本氏は全員に向けて「恥ずかしくなかったらおかしい。1軍でレギュラー張って3年やって一流、プロの世界に入ったと思え」とエールを送ったという。

 球団から若手選手への講義を依頼され、金本氏は快諾した。寮生を対象にした講義は、午後5時から1時間に及んだ。

 金本氏

 タイガースのあしき環境ですか。チヤホヤされたり、毎日新聞に出たり。勘違いが成長を妨げる。グラウンドで結果を出して評価してもらって初めて喜びなさい、と伝えた。

 ボードも使い、自ら手帳に記した数値も突きつけた。藤浪らが入団する以前の過去20年間で、育成選手も含め、計135選手がドラフト入団。「ぼちぼちできたのが22人。一流は10から12人ぐらいしかいない」。この間にドラフト1位で入団した選手についても「12~13人はまったく1軍で姿を見ずに終わっている。それが現実。すでにふるいにかけられている。そこで勝ち抜くための心得をね」。鉄人の口調は熱を帯びた。

 金本氏

 一番は目的意識を持つこと。漠然と練習せず、自分に何が足りないのか、どう練習すればいいのか、それを続けるのが大事。自分の持っているモノすべてを出して、その上でダメならダメ、行けるなら行ける、で。1軍でも7、8割じゃなく、最大限の力を、10割全部を出してほしい。

 話に聞き入った藤浪は「すごいオーラを感じました。OBの偉大な方の話を聞けるのは貴重なこと。1つでも自分の参考にしていきたい。復習して、メモしたモノを見直していきたい」。大目標に掲げ、寮部屋に直筆サインも飾る大先輩の言葉をノートにしっかり書き写していた。【佐井陽介】