<広島5-4巨人>◇16日◇マツダスタジアム

 前進する巨人長野久義外野手(28)のグラブの下を白球が通過していった。まさかの、痛恨の失策だった。同点で迎えた8回1死二塁。キラの右前打に対し、二塁走者の丸はライナーの打球が内野を抜けてからスタートを切ったため、三塁を回るか微妙なタイミングだった。だが、そこで名手長野に一瞬、2択が頭をよぎった。「チャージするか、真っ正面に入るか」。迷いが後逸につながった。歓喜するライトスタンドの赤い波に向かって追いかける長野を尻目に、広島に勝ち越し点を許した。

 結局、13戦連続無失点中と盤石を誇っていた最強の救援ユニット「スコット鉄太朗」の一角、山口も、せきを切ったように崩れた。決定的な4点を奪われ、長野は反省の弁を口にした。「ちょっと迷ってしまった。外野手として一番やってはいけないミス。山口さんにもチームにも迷惑を掛けてしまった。本当に申し訳ないと思っています」と悔しがった。

 良くも悪くも1人で節目の得点に絡んだ。1点を追う5回2死。広島今井の143キロの高め直球を右方向へ強くはじき返した。台風の影響でライトへ強く吹き上げる風に乗って、スタンドインした。「いい風に乗ってくれた。(プロ初登板初先発の)今村が頑張っているので、早く援護をしたかった」。打撃では存在感を示したが、守備で相殺されてしまった。

 連覇への安全圏は変わらず、覇道は揺るがない。だが7月12~14日の中日戦以来となる同一カード3連敗は避けたい要素だった。原監督は「長野は、あれは止めないといけない。この3連戦はなかなかチャンスをつかめなかった」と、まとめた。優勝マジックは5のままで、最短優勝は19日の中日戦(ナゴヤドーム)に持ち越された。小さなほころびを繕って、ゴールテープへの最後のラストスパートを切る。【広重竜太郎】