ソフトバンクの来季1軍投手コーチに南海、ダイエーで活躍した山内孝徳氏(57=野球解説者)の就任が有力であることが8日、分かった。闘志むき出しの投球スタイルで人気を博し、引退後も野球解説者としてお茶の間でおなじみの顔だ。秋山監督とも野球観を共有し、球団は熱心な取材と的確な提言を評価。初のコーチ業に支障はないと判断したもようだ。

 ソフトバンクは来季の巻き返しに向け要職の1つが固まった。先発ローテーションが固定できなかった投手部門。再建のキーマンとして白羽の矢が立ったのは、野球解説者の山内氏だ。今季先発ローテーションを固定できなかった投手部門の再建は、南海、ダイエー、ソフトバンクと球団の変遷を肌で感じ、見守り続けた人物に託されることになりそうだ。

 80年に南海に入団した山内氏は野村元監督の解任騒動以来、空き番号になっていた「19」を引き継いだ。スライダーとシュートを武器に、エース格として82年から7年連続で2桁勝利を挙げた。当時どん底にあったチームで、雄たけびを連発する強気の投球スタイルで人気を博した。

 踏まれれば踏まれるほど強く、たくましくなる麦のようであろうと、グラブには「麦魂」の刺しゅうを施した。ダイエー元年の89年を含めて5度の開幕投手を務め、通算100勝を達成した92年に引退するまで、ホークスひと筋。生き様を物語る125敗を喫した。

 引退後は主にテレビやラジオの解説者とて活動。現役時代から口ひげがトレードマークで、福岡のお茶の間では、分かりやすい解説と軽妙口調の「ひげのおじさん」でおなじみ。球団は以前から山内氏の野球に対する誠実な姿勢や、熱心な取材、冷静な分析、提言に着目していた。明るい人柄で、現役時に対戦した秋山監督と野球観を共有。初のコーチ業にも支障はないとみてリストアップした。

 秋山監督と現役時代から同僚だった高山投手コーチは4位に終わった成績責任を取って、退任。チームは16日からヤフオクドームで秋季練習に入る。小林海外兼中長期戦略部長は「新しい体制でスタートさせたい」と話し、水面下で組閣を進めている。来季6季目を迎える秋山体制が間もなく整う。

 ◆山内孝徳(やまうち・たかのり)1956年(昭31)8月5日、熊本県生まれ。鎮西-電電九州を経て、79年ドラフト3位で南海入り。野村克也元監督の背番号「19」を引き継ぐ。エース格として82年から7年連続2桁勝利。90年以降は抑え、中継ぎもこなし、92年限りで引退。野球解説者、テレビ、ラジオのパーソナリティー、コメンテーターで活躍した。実働12年の通算成績は100勝125敗5セーブ、防御率4・43。オールスターゲームに3回出場(82、83、85年)している。現役時代は175センチ、79キロ。右投げ右打ち。