<パCSファイナルステージ:楽天2-0ロッテ>◇第3戦◇19日◇Kスタ宮城

 楽天嶋基宏捕手(28)が決勝打&好リードで完封勝利に導いた。2回2死一、三塁からロッテ古谷の内角直球をとらえ、左翼線へ2点適時打をマーク。大きな先制点をもたらすと、守ってはプロ初完封を飾った美馬を巧みにリードした。内角球を意識付けし、美馬の持ち味の1つである外角スライダーを効果的に配した。チームリーダーの活躍で日本シリーズ進出に王手をかけた。

 嶋は味方ベンチに向けて、両手でピースした。2回、2死一、三塁。狙いを定めた。「古谷さんにはいつもインコースを詰まらされていたので、インコース一本に絞った」。読みは的中した。1球目、内角直球をファウル。2球目に再び食い込んできた内角直球を捉えた。三塁線を破る2点適時打。「試合を優位に進めたいと思っていたので、打てて良かった」と貴重な一打で美馬を援護した。

 星野監督からは「インコースを続けてくる里崎のリードをよく読んでいた」と褒められた。延長戦の末に敗れた前夜は無安打。さらにルーキー則本が1失点と好投しながら、白星へと導けなかった責任も感じていた。「試合直後は落ち込みましたけど、クラブハウスに戻ったらみんな切り替えていた。『また明日頑張ろう』と」。すぐに奮い立った。

 CSが始まる前から「挑戦者の気持ちで」と話していた正妻は、リードでも容赦なく相手の懐を突いた。第1戦の田中、第2戦の則本に「しつこいくらいだった」と言われるほど、内角球を要求。それがこの日になって、効いた。「内角を意識させることで、美馬の球種で一番いいスライダーが生きた」。右打者に食い込むシュートと、外角スライダーの組み合わせで、4安打完封勝利に導いた。

 嶋の内角攻めはシーズンを通じて徹底していた。昨季までは、星野監督から「嶋は外角が好き」というレッテルを貼られていた。暗に、もっと内角を使えということだった。嶋自身も「インコース、インコースって(監督から)呪文のように言われてました」。先輩の小山伸に何度も相談するほど悩み、時には監督室に呼ばれてお互いの意見をぶつけ合うこともあった。その積み重ねで理解できた内角攻め。それが、短期決戦でも生きた。

 この日も3番井口、4番今江に対し、勝負どころで内角を攻めた。嶋は「美馬がインコースの良いところに放ってくれた」と話し、バッテリーでつかんだ1勝を喜んだ。「あと1勝が本当に難しい。なんとか野手陣で投手を助けたい」。悲願の日本シリーズ進出へ、ナインの中心に嶋がいる。【斎藤庸裕】