<ロッテ3-4日本ハム>◇6日◇QVCマリン

 日本ハムが延長戦を制して3連勝を飾った。延長11回、代走起用されたスーパーサブの中島卓也内野手(23)が2死一塁から二盗を仕掛け、捕手の悪送球を誘い三塁に進塁。適時失策を呼び込み決勝のホームを踏んだ。6月18日以来の貯金2で、4位ロッテとの差を5ゲームに広げた。

 中島の足に命運を託された。延長11回2死一塁。1死から一塁走者の代走で出場。サインは初めからグリーンライトだった。盗塁するか、しないかの判断を委ねられた。緊迫した場面で「とにかくセーフになることで、いっぱいいっぱいだった」と集中した。打者・谷口では包囲網を破れず、待った。計8度のけん制で重圧をかけられながら、こじ開けた。続く市川の2球目。張り詰めた空気の中でスタートを切った。

 クイックに隙がないロサから、二盗を決めた。捕手・江村の送球失策を誘った。瞬時に判断して一気に三塁を陥れた。市川の遊ゴロ失策で決勝の生還。中島は「走れて点に絡んだのは良かった」と喜んだ。今季は6度のサヨナラ負けと不穏なムードが漂う中で、6月18日阪神戦以来の貯金2を呼び込んだ。栗山監督は「無理をしてでもいけと言っていた。あそこで三塁まで行くのは大きい」とうなる大仕事をやってのけた。

 前夜のヒーロー大谷の「元運転手」が3連勝へ導いた。昨季、新人だった大谷は運転免許も、車もなし。寮から球場までの移動に困る後輩に、マイカーで送迎役を買っていたのが中島だった。時にはコンビニに寄り道して甘党の大谷にソフトクリームをごちそうしたこともあった。今季は中島が1人暮らしを始めてお役御免。大型ルーキーを陰で支えてきた縁の下の力持ちが、渋く勝利を演出した。

 居場所を勝ち取る絶好のアピールになった。先発出場の機会が減少する恐れがある中で結果を出した。小谷野が右膝内側側副靱帯(じんたい)を損傷から復帰し、内野のレギュラー争いが激化。この日はライバルに代わって途中出場し存在感を示した。練習でも手を抜かない「野球の虫」として、日に当たらない場所でも努力はかかさない。信念を曲げない頑固さは周囲も一目置くほど。腐らずに根気強く。成果は歓喜の瞬間とともに訪れた。【田中彩友美】