<オールスターゲーム:全セ6-12全パ>◇第2戦◇19日◇甲子園

 後世に語り継がれるであろう伝説の勝負で、阪神鳥谷敬内野手(33)がひときわ輝いた。大谷に規格外の剛速球を連発されてもひるまなかった。1回、先頭で勝負。1球目、いきなり外角に161キロを投げてきた。球宴最速タイの見逃しストライクに驚く。2球目、グンと伸びる快速球が飛び込んできた。ファウルするのが精いっぱいだ。バックスクリーンを見上げて「162」に目をむいた。

 普段は冷静だが、思わず大谷に向かって仰天の球速表示を指さした。「前に(交流戦で)160キロを出して、次に、何キロくらいまでいくのかと思っていた。思い切り投げてきたけど、狙って出せるのはすごい。空振りして終わる勇気がなかった。161キロ、162キロがどれくらいか分からないけど、やっぱり速い。162キロの打席には、なかなか立てない。いい思い出になった」。脱帽するだけではない。159キロをファウルし、4球目だ。160キロの外角球をとらえ、遊撃今宮を強襲。左前に運んだ。

 5度目の球宴で初めて1番に座り、難攻不落の大谷を攻略。マートンの適時打でホームインするリードオフぶりを発揮した。2回は大引の二遊間へのゴロをダイビングキャッチ。「しっかり普段通りに準備した。いいプレーをできて良かった」。堅守で同僚藤浪をもり立て、攻守で存在感を示した。

 甲子園には鳥谷の生きざまが詰まっている。土のグラウンドを主戦場にしながら失策は2つだけ。守備率9割9分4厘はリーグトップだ。定位置につけば、足元を確認するのが習慣だ。阪神園芸のグラウンドキーパーは「試合後に整地に行くとスパイクの跡のところをキレイに整えている。そんな箇所がいくつもある」と驚く。この日は試合前に坂本と遊撃で交互にノックを受けた。体に吸い寄せるような捕球動作を示し、手本を見せていた。本拠地での球宴。ファン投票&選手間投票で選ばれた男の真骨頂があった。【酒井俊作】