<阪神5-17広島>◇13日◇甲子園

 阪神岩貞祐太投手(23)は土俵にすら上がれなかった。自己最短の1回3安打4失点KO。ドラフト1位ルーキー対決となった広島大瀬良と、投げ合う前に決着がついた。

 自滅だった。先頭堂林にいきなり四球。左前打、四球で無死満塁を背負った。4番ロサリオ、6番小窪に高く入ったボールをとらえられ4失点。2回のマウンドにたつことは許されず、ベンチで大瀬良の姿を見つめた。悔しさと大敗の責任と重なったのか。試合後は唇をキュッと結んだまま。「1回で降板という結果になってしまい、チームに申し訳ないです」。試合中に球団広報を通じて出たコメントが全てだった。

 大瀬良がプロ初完投を挙げた5月1日の阪神戦。岩貞は鳴尾浜でテレビ観戦した。「すごかったです、あいつ」。活躍を刺激に左肘のリハビリに取り組んだ。阪神が昨秋ドラフトで最初に1位指名したのは大瀬良。岩貞は外れの外れ1位だった。横浜商大2年の時、日米大学野球で大瀬良とともに選ばれ、同部屋だった。当時4年の巨人菅野、ロッテ藤岡、そして大瀬良と「みんな1位で(プロに)行った。だから1位でほっとした。1位っていう数字は一緒なので」と、岩貞はそう振り返ったこともある。大瀬良との因縁より、結果的に1位となった運を大事にした。

 ただ、同時に重圧を背負うことは分かっている。阪神のドラフト1位。その肩書はつきまとい、今後も試練はやってくる。この一戦での2軍降格はない見込みだが、8月17日DeNA戦の初勝利から4試合連続勝ちなし。先発陣の一角として苦境に立たされた。これから再チャンスが検討される予定。来るべき日に、見返すしかない。【松本航】

 ▼岩貞が、13年ドラフト入団の大瀬良と初の先発対決。阪神がドラフト1位で1回目に入札した投手と、その投手の外れ1位投手がプロ1年目に同じ試合での登板は、87年8月29日中日戦での近藤真一(享栄-中日)VS猪俣隆(法大-阪神)以来、27年ぶり2度目。猪俣は先発し勝利投手。近藤は救援。そろって先発に限れば初となった。