今季国内フリーエージェント(FA)権を取得した日本ハム大引啓次内野手(30)が、他球団移籍を前提に権利を行使することが2日、分かった。球団側と話し合いを行い、決断したもよう。近日中に意思表明する。需要の高い遊撃手で、経験値は豊富。堅実な攻守は健在で、今季は主将を務めてリーダーシップにも定評がある。ヤクルトなどが関心を示しており、争奪戦になる可能性も出てきた。

 大引が、新天地を目指すことが極めて濃厚になった。クライマックスシリーズ(CS)終了後には「それは、おいおい」と保留して熟慮を重ねてきたが、ようやく結論を出した。周囲の近い関係者の話を総合すれば、他球団への移籍を前提に権利を行使する方向性で固まったという。近日中に公の場で、正式に表明する運びとなった。その後、興味を示す他球団との交渉に応じることになりそうだ。

 残留を希望してきた球団側とは、水面下で話し合いを行ってきた。13年1月に糸井を交換要員とした大型トレードでオリックスから、日本ハムへ移籍。2年目の今季は主将を託され、プロ入り最多132試合に出場した。来季も欠かせない戦力との熱意を伝えられたが、大引は新たな環境でプレーするという思いを断ち切れなかったよう。高い意識が、決め手になったとみられる。

 わずか在籍2年だけに、苦渋の末に進路を定めたようだ。栗山監督からの信頼も厚く、不動の遊撃のレギュラー。昨季は最下位に沈んだが、今季は若返りを図り世代交代。2年ぶりAクラスの3位。CSファイナルステージでは3勝4敗(相手アドバンテージ含む)で敗退したが、日本一になったソフトバンクを、あと1歩まで追い詰めた。成績では測れないリーダーシップを発揮し、若手主体の布陣をまとめ上げた。

 野球人生の最盛期に近い30歳。今季は1桁の9失策と堅実な守備が最大の特長。シュアで、状況に合わせて対応するクレバーな打撃スタイルも定評がある。実績と経験も含め、総合力抜群のバイプレーヤー。価値が高い遊撃手だけに、争奪戦は必至の情勢だ。大引と球団側の双方で納得した上での「宣言残留」の選択肢も残しながら、踏み切る。今季は熱いFA市場で、大引も注目の1人になりそうだ。

 ◆日本ハムのFA宣言

 95年オフの金石(残留)、河野(巨人移籍)から昨年の鶴岡(ソフトバンク移籍)まで過去、のべ14人がFA宣言している。97年田中幸、00年と04年の奈良原らのべ5人が残留。移籍は9人で06年小笠原が巨人、10年森本が横浜(当時)など。そのうち06年岡島、10年建山、12年田中賢の3人が米球界へ移った。ポジション別では投手6、捕手1、内野6、外野1。