プロ9年目を迎えた中日浅尾拓也投手(30)が5日、亡き父に完全復活を誓った。この日、中部国際空港発の航空機で恒例となっているグアム自主トレに出発。常夏の島で身体をいじめる覚悟を語った。昨年12月22日に父美国(よしくに)さんが肺がんのために77歳で死去。厳しくも優しい目で見守ってくれた父のためにも、輝きを取り戻す。

 浅尾はグアム出発の日も練習のためにナゴヤ球場に現れた。ランニングにキャッチボール、筋力トレーニング。年明けの3日から3日連続となる練習だった。「いろいろあって練習期間が空いちゃったんで…」。笑顔なく淡々と練習に打ち込む姿は、まさに鬼気迫っていた。

 昨年12月22日に父美国さんが肺がんのために77歳で亡くなった。「褒められたことがない」という厳格な父だった。大学時代にプロ志望を打ち明けたときには「お前なんか通用するはずない」と一喝された。そんな父が長い闘病生活の末に旅立った。

 「お前なんか-」。今、あの時の父の言葉が頭に浮かぶ。昨季は22試合登板で防御率6・16とブレークした08年以来、最悪のシーズンを過ごした。ここ3年は肩痛、肘痛とケガにも悩まされている。11年MVP右腕がプロの世界でもがき、苦しんでいる。

 復活の1歩を踏み出すためにも、常夏のグアムでの過ごし方に変化を加える。「これまでは走ることが中心だったけど、それだけじゃなく投げることもしっかりやる。体幹のトレーニングもしっかりやりたい」。技術的なトレーニングを早い段階からスタートする予定。2年連続で専属の料理人も従え、万全の状態で臨む。

 浅尾は美国さんについて「愛情がある人だった」としみじみ話した。そして「今度は母親が1人になってしまったので、励みになれるよう頑張りたい」と続けた。天国の父親を心配させたくない。そして実家で見守る母親が安心する姿を見せたい。心優しい右腕は、特別な気持ち抱いて常夏の島に向かった。【桝井聡】