日本ハム斎藤佑樹投手(26)が復権をかける5年目に、希望の光が見えた。3日、沖縄・名護キャンプ2度目のブルペン入り。斎藤をアマ時代から熟知する小宮山悟氏(49=日刊スポーツ評論家)が再起の可能性に「潜入」した。

 真後ろに仁王立ちした。背筋を伸ばし両腕を後ろで組んだ。ブルペンに足を踏み入れ、迷うことなく標的へ向かった。視線の先には斎藤。早大の後輩が47球を投げた。投球動作を確かめるようにセットポジションからスタート。感覚が整うと、本来のノーワインドアップから軽快に右腕を振った。アマ、プロ入り後も愛情と表裏一体の手厳しさで、斎藤を見つめてきた。

 小宮山氏

 劇的という言い方はできないけれど、良くなった。アマチュア時代の良かった時に近い感じになってきたようには見えた。プロでやっていける水準に、ようやく達した。

 好転の兆しを感じたポイントがあった。

 小宮山氏

 ベルトから下、下半身の動き。そこが違い。一番分かりやすいのは、そこも含めて全体的にスムーズになった。昨季までとは雲泥の差がある。

 斎藤は12年に右肩関節唇を損傷。13年をリハビリで棒に振り、再起を期した昨季は2勝にとどまった。再発を防止し、さらにパフォーマンス向上を狙った投球動作の改革。陣頭指揮を執った中垣トレーニングコーチは、小宮山氏がメッツ時代の02年から親交がある。2人で並んで意見交換しながら、凝視した。

 小宮山氏

 中垣も言っていたけれど「ここをもう少し、こうできれば」という課題は、まだある。ただ以前のように重心が後ろへ残らずに前へといく。ボールに力を伝えられるようになってきた。

 後輩も呼応した。着実に1歩1歩を上ってきた足元と、現状を見つめていた。

 斎藤

 今はもっと上を目指すよりも1つ1つのボール、動きを洗練させていくことが大事。

 常に辛口だった主観が一転、マイルドになった。

 小宮山氏

 クリさん(栗山監督)も言っていたけれど、開幕ローテーションの可能性はあると。それも、うなずけた。【構成・高山通史】<11年~14年春季キャンプでの小宮山氏の斎藤評>

 ◆11年

 2月13日、実戦初登板(対韓国サムスン)をネット裏から観戦。1回無失点の14球に「直球らしい直球は1球もなかった。横の回転がかかり、スライダーやカットボールのような変化を見せていた。実はこれ、力んだ時の斎藤によく見られる傾向である」とコメント。

 ◆12年

 ブルペンで強めのキャッチボールを行った2月4日にチェック。リリースポイントを前に持ってくるための投球フォーム変更を分析し「その様子は『お世辞にもきれいとは言えなかったフォームを改善しようと、試行錯誤しながらもがいている』といった印象を受けた」と話した。

 ◆13年

 右肩痛でリハビリのため評価なし。

 ◆14年

 2月4日に視察。「1、2年目と比べ、投げ上げているような感じがなくなった」と評価した一方で「腕を振る速さよりも、ボールが指を離れる瞬間の手首を返す速さがなければいけない。それではスピンがかからない。残念なことに、そこがまだ物足りなかった。現段階のレベルでは1軍ではダメ」と指摘した。