<練習試合:日本ハム5-3KIA>◇17日◇沖縄・名護

 さらなる進化を感じさせる投球だった。日本ハム大谷翔平投手(20)が練習試合の韓国KIA戦に今季初先発し、3回無安打無失点の6奪三振と圧倒的な存在感を見せた。最速154キロの直球とスライダー、フォーク、チェンジアップなど変化球のコンビネーションで、許した走者は四球の1人だけ。打者10人中7人から初球ストライクを奪い、3回で38球と球数も申し分なし。開幕投手最有力候補が課題の球数減へ、進化の姿を披露した。

 欲が出た。1人の出塁も許さず迎えた3回2死。フルカウントからの6球目、外角低めを狙った大谷の148キロ直球は、わずかに外れた。「(ボール)1個半外れました。9番打者だし、そんなにコースを狙わなくてもよかった」。四球で許した唯一の走者。「最後の四球は余計」と反省したが、3ボールからでも外角低めを目がけるほど、この日の制球力は抜群だった。3回6奪三振で無失点。今季初先発のマウンドを堂々の内容で終えた。

 常に主導権を握った。打者10人に対し、初球ストライクが7度。最速154キロの速球を中心にグイグイ押した。1回は直球に強いといわれる韓国打者から、すべてストレートで3者連続三振。「コースもよかったです。空振りするところに投げられた」。脱力を意識したフォームから、リリースの瞬間に腕をしならせ、「シュート回転していない、比較的いいボール」を投げ込んだ。

 2回2死、昨季は投げなかったチェンジアップで、6番の左打者を三ゴロに仕留めた。フォークとは違い、タイミングを外して凡打を狙う球種。常にカウントを有利に進めたことに加え、2球でアウトを奪った新球種で、球数を減らすことにも成功した。3回38球。5回で100球近くに達することも多かった昨季の姿とは、明らかに変わっていた。

 リリーフ陣の負担軽減のためにも、首脳陣はシーズンを通して投球回数を増やしてほしく、「省エネ指令」を課している。大谷自身も自覚十分。ボール球が多く、2回1失点だった9日の紅白戦後は「必死に自分のポジションをつかみにいく戦いをして欲しかった」と厳しい言葉を並べた栗山監督は、「打者に向かっていく感じが出てた。今日に関してはよかった」と褒めた。

 目指すべき3月27日開幕戦(対楽天、札幌ドーム)へ向け、最高の発奮材料もあった。15日夜、沖縄・名護を訪れていた野茂英雄氏と食事を共にした。日本で2度、さらにメジャーでも開幕投手を務めた大先輩と直接言葉を交わし、そのすべてが掛け替えのない財産になった。力がみなぎったのは、腹いっぱい堪能したステーキのせいだけではなかった。

 次回は24日の紅白戦(名護)で60球近くを投げる予定。「今日は走者が出なかったので自分のテンポでいけました。無死で走者が出たり、イニングが伸びればそういうところも出てくる。しっかりやりたいです」。着実に、ステップアップを続けている。【本間翼】

 ◆大谷の投球数メモ

 昨年は通算155回1/3を投げて2538球。1試合最多は8月17日西武戦の149球(7回)で、1イニング平均の投球数は16・34球。1年目の17・81球から減ったものの、昨年パ・リーグの規定投球回に到達した13人の中では9位で、タイトルを獲得した金子(オリックス)岸(西武)則本(楽天)の3人は大谷より少ない15球台。ちなみに、24勝0敗の13年田中(楽天)は14・06球、18勝した11年ダルビッシュ(日本ハム)は14・64球と、日本で最高の成績を残したシーズンは2人とも14球台だった。