<全日本大学野球選手権:近大工学部3-0名桜大>◇8日◇1回戦◇東京ドーム

 近大工学部(広島6大学)の久保田高弘投手(3年=山陽)は、名桜大(九州地区)を相手に大会史上6人目のノーヒットノーランを達成した。

 草食系エースの久保田は、礼儀正しく帽子を取ると控えめにガッツポーズしてみせた。名桜大・篠原を遊ゴロに打ち取り、快挙を達成。「信じられない。鳥肌が立ちました」と、全国舞台で打ち立てた記録に驚きを隠しきれなかった。

 173センチ、65キロの小さな体に、あどけない顔と高めの声。片山慎一監督(40)が「かわいい声で『打ってくれー』とかベンチで言われると、気が抜ける」と話す“ゆるキャラ”的存在だ。だが投球は抜け目ない。許した走者は3回の四球1人だけ。丁寧に低めをついて11三振を奪い、108球(内野ゴロ8、フライ8)で名桜大打線を封じた。

 完全試合を含めると、無安打無得点は大会史上6人目。04年の明大・一場(現ヤクルト)以来7年ぶりの快挙だ。近大工学部は、過去5回のうち2回でノーヒットノーラン「された側」。3度目で初めて「した側」として大会史に名を刻んだ。大学選手権勝利も、片山監督が在学中だった40回大会以来20年ぶりだった。

 生粋の広島人の久保田は、家族そろってカープファン。「元広島の高橋建さんのフォームに一目ぼれ」し、小4で野球を始めた。だが高校で腰椎分離症をわずらい、一時は美しいフォームで投げられなくなった。入学後、投手出身の片山監督に「腰が下がっている」と指摘され、一から体重移動を修正。小さな体を目いっぱい伸ばして投げる現在の投げ方になった。

 最速140キロでも、チェンジアップで緩急をつける技巧派として復活。「次も低めに集めて頑張ります」。卒業後は公務員になりたいという久保田が、その夢のごとく堅実な投球で8強進出を目指す。