<プロ野球ドラフト会議>◇24日

 エース左腕、能見2世や。「プロ野球ドラフト会議

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 リポビタンD」が東京都内で開かれ、阪神は横浜商大・岩貞祐太投手(4年=必由館)を1位指名した。横浜市内の同大で記者会見を行い、憧れの選手として能見の名前を挙げ「同じチームに入れることは自分にとってもプラスになる」と、早くも入団会見のような抱負を語った。和田監督からも「能見に似ている」と評価され、相思相愛。虎史上で前例のないサウスポー新人王も誓った。

 エース左腕の称号にふさわしい男が、タテジマのユニホームに袖を通す。岩貞の緊張が解けたのは、和田監督のガッツポーズを見たときだった。1位抽選で阪神が2度外した。迎えた日本ハムとの2球団重複の指名。当たりくじを引き当てた和田監督を見て、初めて大きく息を吐き出した。隣の佐々木正雄監督(65)と握手を交わすと、笑みがこぼれた。

 不思議な縁を感じさせた。会見で岩貞は、憧れの投手として能見の名前を挙げた。「強い腕の振りからいろんな球種を投げる投手として評価されているのが能見投手。教わりたいことはたくさんある」。入団交渉どころか、まだ指名あいさつすら受けていない段階。それでも、すでに心は聖地甲子園にある。そして、偶然にも指名された球団のエースは、自分の特長でもあり、目指すフォームと重なる。ドラフト中継で阪神和田監督が映し出されると会見を一時中断し、インタビューを注視。すると「能見に似ているタイプ」というコメントが飛び出した。虎の指揮官も、能見と岩貞の姿が重なっていた。

 能見2世の道を歩んできた。神奈川大学リーグで2年春は5勝で最優秀投手となり優勝に貢献。夏は日米大学野球にも出場。ただ、秋に調子を崩した。「何かを変えなきゃいけない」。その年の冬に見たのが能見の投球フォームの動画だった。「間の取り方、体重移動、腕の振りを参考にしました」。翌春は復調。成長は止まらなかった。今秋6勝中3完封。防御率0・42で再び最優秀投手とベストナインに選出され、1位候補に浮上した。

 佐々木監督は岩貞の能力に太鼓判を押した。「はっきり言って即戦力です。いじらないで使ってほしい。強く要望して、私のあいさつにしたい」と、ひときわ声を大きくして締めた。監督の気持ちを受けて、岩貞も力強く抱負を語った。

 「まず先発というポジションを獲得したい。10勝の目標を掲げて臨みたい。新人王も狙います」

 新人ながら12勝した67年江夏、86年8勝の遠山、1位入団も5勝だった91年湯舟、現オリックス井川、左腕エースの能見らサウスポーで新人王を獲得した選手は誰もいない。その快挙を堂々と言ってのけた。今季阪神の先発左腕が挙げた白星は18勝。先発左腕の補強は重要課題だっただけに、新人王級の活躍となれば、悲願のリーグ制覇がグッと近づくはずだ。

 高校時代は甲子園に出場していない。関西遠征の際、甲子園大会を見ただけ。「本拠地になることはうれしいこと。日本一熱いファンの期待にこたえられる投手になりたい」。大きな期待を背に岩貞が虎戦士となる。【矢後洋一】<岩貞祐太(いわさだ・ゆうた)アラカルト>

 ◆生まれ

 1991年(平3)9月5日、熊本県。

 ◆家族

 母と弟。「弟は熊本大学1年で野球をやっています。捕手と外野を守っています」。

 ◆サイズ

 182センチ、78キロ。左投げ左打ち。

 ◆球歴

 若葉小4年から始め、東野中まで主に中堅手だった。高校では一塁も守り、投手になったのは2年の新チームから。「入学した直後、監督から投手をやれって言われたけど打撃が好きだったので。3年が抜けて投手がいなくなり、やらないといけなくなりました」。

 ◆球種

 1番の武器はカットボール。ほかにカーブ、スライダー、チェンジアップ。MAX148キロ。

 ◆好きな言葉

 強気。「1、2年のとき、打たれたらどうしようとかマイナスばかりに向かっていた。それからはプラスに考えるように、常に心の中に持っています」。

 ◆特技

 水泳。幼稚園から小6までやっていた。得意は背泳。「スイミングスクールの記録会ではいつも1番でした」。

 ◆趣味

 映画観賞と散歩。「最近観た中ではモンスターズインクが良かった。1人で観に行きました。散歩は電車で河川敷まで行って地味に歩いています」。

 ◆好きな食べ物

 和菓子。「羊羹は小さい頃から好きです」。

 ◆嫌いな食べ物

 なし。

 ◆好きな学科

 数学。「わりと得意でした。公立なので勉強しないといけない環境でした。赤点だと練習できなくなるので、試験前は必死に勉強していました」。