新日本プロレスで、本間朋晃(38)がブレーク中だ。レスラーとしては小柄ながら、黒光りする肉体と、金色に染められた頭髪、黄色いパンツがトレードマーク。何よりも「こけし」の異名で、今やプロレス女子に大人気を博し、試合中のこけしコールは、メーンの大声援に匹敵する。

 「今の新日本のリングは、世界中の全レスラーのあこがれ。本当に幸せ者だと思います」と本間は、しみじみと語る。こけしは、本間が繰り出す「ダイビングヘッドバット」の総称。コーナーの最上段から、小首をかしげ笑みを浮かべながら、そのまま倒れ込む形や、ロープの反動を利用して相手の背中にお見舞いする「こけしロケット」など、状況に応じて出す技に、ファンは熱狂する。

 ヘッドバットを始めたころは、初代タイガーマスクをまねて、両手を伸ばした形だった。それが自分に合わないと現在の気をつけの姿勢の「ハリー・レイス式」に変えたという。名前は、喫茶店で真壁刀義から「山形出身だし、こけしにしたら」と勧められ、命名した。「ボクと真壁さんとこけしは、切っても切れない縁」と本間はいう。今や、こけしが本間の代名詞。「プロレスラーは何千人、何万人といるけど技の名前でコールされるレスラーはいない。それがボクの誇りです」と本間は言う。

 実際の試合では、こけしはなかなか決まらない。こけしを繰り出す前に、頭を手のひらでたたくデモンストレーションが長すぎ、相手が前の技からのダメージから回復して、よけられる可能性が高くなる。試合では、開始から3、4回連続誤爆というシーンをよく見かけるが、会場では逆にそれがファンを喜ばせてもいる。

 直木賞作家の西加奈子さんも「本間さんのこけしには勇気をもらっている」と話しているが、失敗しても、失敗してもチャレンジする本間の姿勢が、ファンに感動を与えるのだ。本間も「99%逃げられるけど、残りの1%にかけている。こけしを出す前に、アピールしないでいけよって言われるんですけど、ボクはアピールしたがりなんで」と本間は笑う。

 もう一つ、本間の魅力? はしゃがれ声だ。05年に、ラリアットの拳の部分がノドを直撃し、のど仏がなくなってしまったという。声が出なくなったことで悩みもしたが、それが今の人気爆発の要因になっているから人生は分からない。今年に入ってバラエティーなどテレビ番組への出演が大幅に増えた。「こんな声が、まさかまさかのブレーク」と本間も苦笑する。

 今年の目標を「対戦カードを見て、この試合は本間が負けると思われるのを返上したい」と話した。最近では、タッグマッチで勝利につながる活躍をすることも多くなった。4月5日の両国国技館大会では、6人タッグで、こけしを決め技に、コーディ・ホールから3カウントを奪った。本間は、38歳にして日々進化を続けている。【プロレス担当=桝田朗】