まるであり地獄のような集中打だ。IBF世界ミニマム級王者高山勝成(32=仲里)が9月27日、2度目の防衛に成功した。同級10位原隆二(25=大橋)の挑戦を8回TKOで退けたが、フィニッシュにいたる連打は圧巻だった。

 連打でTKOといえば、パワフルに相手を倒すシーンがイメージされるが、高山の集中打はちょっと違う。強打というよりも軽打。1発1発のパンチにそれほどの威力はないが、パンチ数が尋常ではない。まるでパンチで相手を押しつぶすような攻撃だ。しかも連打の中に時折、右ロングフックという大砲をまぎれこませている。

 昨年12月31日の大平戦ではどとうの94連打で7回TKO勝利を手にした。相手のスタミナ、集中力を削り取るような連打だ。一気に追い込む迫力はないかもしれないが、術中にはまれば、相手は気力、体力ともに失って、反撃もままならない。ロープに追いつめられて一方的に打たれる形だ。

 豊富な練習量がベースにあるが、さらに高い技術も備えている。相手が逃げても柔軟な足さばきに距離をつめる。しかも相手の斜めから小さなパンチを顔面に当てて、連打と連打の間をつなぐ。このつなぎは相手の鼻先に触れる程度のもの。パンチというよりもタッチ。ただ相手からすれば、見えないところからグローブが伸びてきて、顔の前でちらつけば、威力がなくても過剰に反応して体勢を崩してしまう。そこに畳みかけるのが高山スタイルだ。

 かつては判定が多かった高山だが、現在は完全に相手を仕留めるパターンを確立した。何よりもあの永遠に続くかのような集中打。ボクシングになじみがない人にとっても一見の価値があり、と感じている。【益田一弘】