「パウンド・フォー・パウンド」。体重差を超えて最強と目されるチャンピオンに与えられる称号や考え方だ。階級制の格闘技にあって、いつの時代も「本当に強いのは誰か」が興味の的。さらに時代を超えて「もし戦っていたら」とロマンもある。

 先日のテレビで「日本のパウンド・フォー・パウンド」を専門誌の記者らが選出していた。放送では論議は断片だけで、その中でも考えはいろいろだったよう。おそらく全員が納得はしていない空気だった。

 その結果は原田、具志堅、井上、勇利、長谷川がベスト5だった。スピードある連打の原田、KOラッシュでV13の具志堅、うまさ、速さで攻防兼備の井上、軽量級で抜群の強打者勇利、初回KO連発の長谷川。それぞれ、さまざまな売り、持ち味がある。

 ゲストの具志堅氏は一番に大場を挙げていた。あの逆転防衛、切れ味は記者も強い印象があり、現役中死亡の最期にカリスマ性も感じる。今の時代は過去の映像もネットで簡単に見られるが、やはり本人が現場やテレビの生で見たボクサーは印象が強い。

 記者も迷う。壮絶ファイトの輪島、空手殺法で通算V10の渡辺もいる。リングサイドで見た初回KO奪取の浜田は強烈だった。いまだ現役の辰吉は最後のたたき上げだし。具志堅の防衛記録にあと3つの強打者内山、左の一撃必殺の山中と現役も捨てがたい。

 そんなことを考えていたら、なんとヘビー級のクリチコがついに陥落した。最多25回防衛も見えていたが、実に11年ぶりの黒星でIBFは19度目に失敗。198センチの巨人もオーソドックスなボクサーファイトが退屈と、人気はいまひとつだった。

 パウンド・フォー・パウンドの議論が最近盛んなのも、この辺に要因があるだろう。ボクシングと言えばやはりヘビー級が醍醐味。巨漢が激突して1発の破壊力に金がつぎ込まれた。クリチコ長期政権に人気は中量級に流れたが、メイウェザーのピカ一技術も倒さない戦いで、世界的に人気爆発まではいかなかった。

 小柄でダイナマイトなタイソンは一時代をつくった。アリ、フォアマン、ホリフィールド…、ジョーンズもいる。話が尽きないのがパウンド・フォー・パウンドなのだろう。【河合香】